第6章 甘い罠◎
10:45 元町中華街駅ーー
約束時間の15分前に着いたので、傑さんの到着を待つ。
『泉智ちゃん、こんにちは』
傑さんはいつも通り優しい笑顔で話し掛けてくれた。
『こっこんにちは』
素敵な笑顔にときめいてしまい、少し顔が赤らむ。
『さあ!今日は楽しもうね!』
『はい!』
まずは中華街へと向かった。
傑さんがオススメしてくれた小籠包を2人で分ける。
『あ、ここにちょっとついてる』
そういうと、傑さんは私の口の端を指で拭き取り、その指をペロッと舐める。
『美味しい』
『・・・!』
突然の行動に、驚きを隠せず顔が真っ赤になってしまった。
"普通に舐めちゃった…"
『さて!腹ごしらえも済んだことだし、次は山下公園でのんびり散歩でもしようか』
近くにあったカフェで飲み物を買い、飲みながら歩みを進める。
『風、気持ち良いですね。
私こういう所歩いたことあんまりないので、とても嬉しいです!』
ふと前を見ると、若い女性が2人、傑さんを見て何か話している。
"あ…そっか…傑さん背も高いし、顔もカッコいいから目立つんだ…"
そんな人の隣を歩けている事が嬉しくもあり、少し恥ずかしくもあった。
『そう言えば、この前会った時に、何か悪い事があったと言ってたよね?
あれは私には話せない事かな?』
『…今は…まだ……』
あの話をして、傑さんに嫌われたくない。
もう少しこの楽しい時間を一緒に過ごしていたい…。
『そっか。また気が向いたら教えてくれればいいさ』
傑さんは私を見て微笑み、頭を撫でてくれた。
『あそこにベンチがある。
少し座ってゆっくり話そうか』
ベンチに腰掛け、海を見ながら話す。
『高校は楽しい?』
『はい!頼もしい先生、信頼出来る仲間、私には勿体ないくらいです!』
『そうか。仲間を大切にするんだよ。
そして何か辛い事があったら、仲間の次でいい、私を頼ってくれ。
きっと泉智ちゃんを支えてあげられる』
『・・・傑さんは何で私にそんなに優しくしてくださるんですか?』
『そうだなぁ・・・
君が、私の守ってあげたい欲を駆り立てるからかな?』
『・・・?』
『ふふふ。何でもないよ。』
それから暫く話して、次の目的地へ向かう。
傑さんが手を差し出してくれたので、私は少し恥ずかしながらもその手を握り返した。