第6章 甘い罠◎
『もう会いに行ってもいいの?』
虎杖が聞く。
『どうでしょうか・・・吉本さんは、またみんなの足を引っ張ってしまって、顔向けが出来ないと仰っていました。
そして、自分は穢れてしまったと…』
『そうですか…』
俺はまた守ってやれなかった。
俺が傍にいれば違ったのか?
なあ、俺は何回自分にこの質問をすればいいんだ?
なんで俺はこんなに…弱いんだ……
しばらくし、俺は泉智の様子を見に行った。
ベッドの上には、顔に無数の傷やアザがある泉智が眠っていた。
『泉智…ごめんな…
俺、またお前のこと守ってやれなかった…』
泉智の手を握り、俺は自分の無力さを嘆いた。
どれぐらい経っただろう。
『めぐみ…くん…?』
泉智が目を覚ました。
『泉智?!大丈夫か?!』
『恵君…私…本当にごめんなさい…』
目に涙を溜めて俺に言う。
『・・・なんで森の中になんていたんだ?』
今聞く事じゃないかもしれない。
でも…知りたい。
『ずっとずっと恵君にありがとうを言いたくて…』
まさかお前は俺に礼を言うために森の中に入ったのか?
そして男に犯されたのか…?
俺はお礼を言ってもらうような事なんてしていない。
ただ、自分のしてしまった事を帳消しにするために…
俺の中は負の感情で溢れ返り、握り拳を握っていた。
泉智が話を続ける。
『私、穢れちゃった…
大好きな人と…って思ってた…それが当たり前だと思ってたの…』
泉智の頬に一筋の涙が伝う。
俺は泉智のことを抱き締めていた。
『…嫌だったのに手足は動かなくて…
でも頭はとてもはっきりしていて…
そんな時に恵君は私に手を差し伸べてくれたの。
夢だって分かってた。でも、すごく心強かったの。
…本当にありがとう…』
泉智は声を震わせながら話す。
抱き締める腕に力が入る…
『お前は穢れてなんていない。
お前は誰よりも輝いていて、誰よりも綺麗だ。
お前は……
…何でもない。』
俺は言葉を飲み込んだ。言えなかった。
なあ泉智、俺は絶対にもっと強くなってお前を守るから、それまで言葉の続きを待ってくれるか?
お前は、
"俺の一番大切な人"