第6章 甘い罠◎
『なぜだ?』
『以前の戦いで宿儺が相手だったとは言え、驚くほど動けていませんでした。
今回は禪院先輩のためにも負けられない戦いですよね?だったら尚更泉智は出さない方がいいです』
『だったら、俺やめとくよ…』
虎杖君が申し訳なさそうな顔で言う。
『・・・ううん…いいの…
確かに私レベルじゃ戦力にはならないと思うから…』
嗚呼、泣いてしまいそうだ・・・
すると、狗巻先輩がそっと私の背中をさすってくれる。
"大丈夫だから、落ち着いて"と言われているようだった。
『自分で分かってるならそれでいい』
恵君はとても冷たい目で私を見ていた。
『お前ら仲良くしろよ…な?』
パンダ先輩も気を遣って言ってくれた。
こうして私は、術式を一切使わず、みんなを遠くから見て勉強することになった。
"いつも私だけが最前線に立たせてもらえない。
悔しい…強くなりたい…"
そう思った。
"区画内に放たれた二級呪霊を先に祓った方が勝ち。
他にも三級以下の呪霊が放たれているから、もし時間内に二級呪霊を祓えなくても討伐数が多い方が勝ちになる"
私以外のみんなは強いから、勝てるよね。
しっかり勉強させてもらおう…!
私はやる気に満ち溢れるみんなの後を追った。
『泉智、大丈夫?』
釘崎さんが私を気遣って聞いてくれる。
『うん、大丈夫だよ!
恵君の言ってる事は間違いないし…私が弱いからダメなの。
頑張って強くならなきゃ…』
『あいつなりに、あんたのこと心配してんのよ。
あんたが3日間寝込んだ時、ほぼ毎日あんたの看病してたわ…
1人にさせたくないってね。
宿儺のこと、自分のせいだと思ってるんだと思うわよ。
次宿儺があんたの前に現れたら…ってすごく心配して、だから多少キツく当たってでも前線から退けたいのよ。
分かってあげてね』
『え・・・?』
知らなかった・・・。
私はてっきり五条先生が付き添ってくれていたものだと思っていた…
あの温もりもあの聞き覚えもある声も、あれは全部恵君だったんだ・・・
今すぐ恵君に会いたい。
恵君に会って、ありがとうと言いたい・・・
『釘崎さんありがとう!!!』
私は傑さんに貰ったスポーツドリンクを一気飲みし、恵君を追う。
・・・追うつもりだった。