第6章 甘い罠◎
『只今戻りました…』
何時間も先輩方をお待たせしてしまった…。
『おい泉智!お前どこのコンビニ行ってたんだよ?!
隣町まで行ってたのか?!?!』
真希先輩に怒られる。
それでも私の心は傑さんのおかげで晴れ晴れしていた。
『…ってあれ?!恵君と釘崎さんは…?』
『お前がボサッと隣町まで行ってる間に、色々あったんだよ。
2人は京都校の奴にやられた』
私はその言葉を聞いて医務室まで全力で走った。
『恵君!!!釘崎さん!!!』
大声と共に医務室の扉を開ける。
『静かにしなさい』
家入さんに怒られてしまう。
『ごめんなさい…
恵君と釘崎さんいらっしゃいますか…?』
『あら泉智!来てくれたんだ!』
恵君と釘崎さんが隣同士のベッドで横になっていた。
『釘崎さん大丈夫なの?!
私先に逃げちゃったみたいになって…本当にごめんなさい。』
涙が出そうになるのをグッと堪える。
『あんた大袈裟よ!ちょっとやられただけ』
『恵君は…大丈夫?』
私は隣に寝ていた恵君に声を掛ける。
『お前に心配される程の事じゃない。
こんなのかすり傷だ。
早く先輩たちの所に戻って鍛錬してこい』
恵君はこちらに背を向けたまま、振り返る事なくそう答えた。
『・・・分かった。
助けられなくてごめんなさい…』
"最近の私は空回りばっかりだ…
離れろって言われたから離れたけど、結局私だけが助かって…
私だけ助かるぐらいなら、私だけやられる方が何倍もマシだよ…"
『失礼しました』
私は静かに医務室を後にした。
『伏黒さ、ちょっと泉智に当たり強過ぎない?
恨みでもあんの?』
『違う……
あいつ、俺の前で2回も宿儺に襲われてんだよ。俺の前じゃない所でも何かあったみたいだし。
みんなが言う、宿儺のお気に入りっていうのは間違いじゃねぇんだよ。多分次は…
だから、あいつは自分で命を守れるようにならないといけない』
『ただ厳しいってわけじゃないのね。
素直になればいいのに!あんた可愛げないわね』
『うるさい』
"俺はもっと強くなって、必ずあいつを守る。"