第5章 秘密◎
私は長い廊下を1人で歩いていた。
出口は見えない。
人が立っている、誰だろう?
『あんたさえいなければ』
『消えろよ』
『気持ち悪りぃな』
父、母、姉、弟、そして私を虐めた人たちがそこにいた。
これでもかと私に非難の言葉を投げ付ける。
『ごめん…なさ…い』
私さえいなければ…そう思った。
すると突然誰かに優しく抱き締められる。
とても温かく、心地よい。
『早く戻ってきてくれ』
聞き慣れた声に安心する。
私を必要としてくれる誰かがいる…
でも、もう少しだけ…
もう少しだけこのままいさせて……
その誰かの温もりをもう少しだけ感じていたい…
どれぐらい経ったのだろう、そろそろ戻らないと…
そう思い、重たい瞼を開けてみる。
"眩しい…朝なのかな…"
私が会いたくてたまらなかった人が、そこに座っている。
朝日を背に見えたのは…五条先生だった。
『先生…』
『起きたんだね。泉智、おかえり』
『先生がずっと私の傍にいてくださったんですか…?』
そう聞くと、先生は何も言わず私をギュッと抱き締めてくれた。
"温かい…"
『先生ありがとうございます。先生のおかげで、戻って来れました。』
涙が溢れてしまう。
この温かさをもっと身近に感じたい。
貴方にもっともっと傍にいてほしい。
『ちゅっ』
私は先生にキスをしていた。
『ごっ…ごめんなさい…勝手な事しちゃいま…』
私の言葉を待たずに、先生からのキスを受ける。
先生の舌が私の舌にしっかり絡まり、離さない。
くちゅくちゅ…ぴちゃ…
以前にも増して激しいキス。
私はもっと欲しいと先生を求めた。
ーバタバター
廊下で人の走る音が行き交い、騒がしさが増してきた。
私と先生は唇を離した。名残惜しそうに、お互いの口を糸が繋いでいた…
『泉智、1つ言わないといけない事がある』
『・・・?』
『悠仁が死んだ。宿儺のせいだ』
『…へっ?先生、悪いご冗談を…』
『冗談じゃない。あいつはもうこの世にいない』
先生の声が遠のく…
耳栓をしているように周りの音が何も聞こえなくなってきた。
『はぁはぁはぁ』
助けて、息が出来ない…