第5章 秘密◎
授業中も恵君とは目も合わず、完全に避けられていた。
虎杖君も昨日の事があったからなのか、私に近付こうとはしなかった。
『はあ…
なんか昔に戻ったみたい…つらい…』
私は息抜きのため、放課後少しだけ出掛けることにした。
最近観た映画の中で、綺麗に変身する主人公を見て、自分も変わりたいと思いメイク用品を買うためデパートに行った。
『わ〜!!』
今まで足を踏み入れた事のなかった煌びやかな世界…
香水の匂いが鼻をくすぐる。
『お客様、何かお探しですか?』
『え…えっと…自分を変えたくて…』
華やかなお姉さんを前に緊張してしまい、小声になる。
『もしよろしければ、フルメイクさせてもらえませんか?』
『はっはぁ…』
"フルメイクってなに・・・?"
私はお姉さんの指示に従い、メイクをしてもらう。
『お客様、終わりましたよ!どうぞ鏡をご覧ください。』
閉ざしていた目を開ける。
『へっ…?これ私ですか……?』
鏡を見て驚きを隠せなかった。
そこには、さっきまでの地味な自分ではない誰かが映っていた。
『そうですよ!
お客様は元がとても良いので、メイクすることでよりお顔が映えます。
勝手だとは思ったのですが、少しだけヘアメイクもさせていただきました!』
お姉さんが満面の笑みで話してくれる。
『使った化粧品、全ていただけますか?』
お姉さんの腕前ももちろんだが、これだけ変われるのであればと思いメイク用品を全て購入した。
"嬉しい…!お休みの日はメイクの勉強でもしようかな"
初めて女の子らしい事をした私は、完全に浮かれていた。
帰り道、突然声を掛けられる。
『お姉さん今暇?何してるの??』
5,6人の男の人に声を掛けられる。
"なんだろう…道案内して欲しいとか…?"
『あ、今買い物してまして、これから寮に帰るところです!』
『寮に住んでるんだ?君ほんと可愛いね!』
『あっありがとうございます…?』
あれ?私この顔どこかで見たことある…
"・・・!!!"
『ん?あれ?もしかして…吉本?!
わー!久しぶりじゃん!!元気にしてたの?っつーか、めちゃくちゃ綺麗になっててウケるんですけど!』
男たちが騒ぎ立てる…
私は逃げようと踵を返すが、腕を掴まれる。
『ねえ、またバニーちゃん着てくんない?』