第5章 秘密◎
『吉本…ごめん………』
小さく、今にも泣きそうな声が聞こえる。
『い…いたどりく…ん?』
『あぁ…
ごめん…俺……最低だな』
虎杖君を見上げると、紋様はなくなっていた。
そして、月明かりに照らされた彼は、とても悲しい顔をしていた。
『そんな…悲しい顔をしないで…』
行為は終わっているのに身体中の疼きが止まらず、吐息混じりに話す。
『…ほんとにごめん……
この事、五条先生に言ってく…』
『言わなくていい!!』
自分でも驚くほど大きな声が出た。
『そっそんな事言って、もし虎杖君が処刑にでもなったら・・・
みんなが困るよ。
私は大丈夫。虎杖君がやった事じゃないから・・・
だから虎杖君が謝ったり、罪を被ることはないの。
この事は秘密にしておこう・・・?』
震える声を必死に絞り出し、自分の想いを伝えた。
『ありがとう吉本』
そう言って虎杖君は私を抱き締め、ハンカチで私の涙を拭うと、そのまま部屋を後にした。
パタン…
ドアが閉まると同時に、私は膝から崩れ落ちた。
"怖かった…"
男のモノを見たのは初めてだったし、口に出されたものは何か分からない。
でも、何よりも一番怖かったのは、大嫌いな宿儺に触られているのに、気持ち良いと思ってしまった自分自身…
行為が止まってしまった時、少し名残惜しさを感じてしまった。
"自分が…怖い……"
私はドアにもたれかかり、しばらく震えが止まらなかったーー
"恵君や五条先生に知られるとマズイよね…
何とかしてバレないようにしないと……"
・・・こんな状況なのに、とても冷静にそんな事を考える。