第3章 宿儺◎
あの日、泉智を助けた日から、俺たちは同じ時間を歩んできた。
正直泉智には高専に来て欲しくなかった。
これから修行して強くなるって言ったって、俺らより強い呪霊呪詛師なんてゴロゴロいるわけで、そいつらと対峙することになったらあいつは・・・
そう思うと居ても立っても居られなくなるからだ。
でも、あいつはキラキラした目で入学を決めた。
その決意を俺が揺るがしていいものでもないし、それなら俺があいつを守ろうと決めた。
『五条先生、今後泉智の仕事全部に俺を同行させてください』
『え〜?なになに〜〜?恵、泉智のこと好きなの〜?』
『違います。殴りますよ。
あいつ1人だと不安だからです。術式も上手くこなせてないし、呪いの怖さを分かってない』
『そうだよね〜心配だよね〜。
じゃあさ、手始めに仙台で一仕事してきてくれない?』
『分かりました。』
守ってやると決めたはずなのに、早速泉智は俺の目の前で男とディープキスをしている。
顔を紅潮させ、男の肩に手を回している。
俺は宿儺の呪いなのか、身体を動かせない。声が出ない。
どうしようもないこの状況の中でも、反応してしまいそうな俺のそこ…。
これこそ蛇の生殺し状態だ。
やめてくれ泉智、俺以外の前でそんな顔をしないでくれ。
そんな声を出さないでくれーー
泉智は俺を守るためにやったと言っていた。
分かってる。
あそこでお前がもし拒んだなら、多分、いや絶対、2人とも殺されていたーー
あいつなりに命を張って俺を守ってくれたのに、俺は泉智を突き放してしまった。
本当はありがとうを伝えないといけないのに…
宿儺が憎い。
女なんてどこにでもいるのに、なぜ泉智を弄んだ?
思い出しただけでも胸が張り裂けそうになるこの感情に、名前が欲しい。