第1章 遭逢
ギュッと固く閉じた目を恐る恐る開く。
そこに立っていたのは、黒髪の男の子…
『大丈夫か?』
私に手を差し伸べてくれた。
男の子の手を握り、ゆっくりと立ち上がる。
少し立ちくらみがした。
"・・そういえばあの妖怪!!もういない?!"
辺りを見渡すも、もう影も形もなくなっていた。
『あんた、見えるんだな』
その男の子はぶっきらぼうに言う。
『何が・・ですか?』
『呪いだよ、呪い。さっきのは呪霊。普通人間には見えないんだよ』
『え?の、呪い?!じゅ、じゅれえ?
いやでも私は普通の中学生ですし、そんな特別な体質とかでもないですし、えっとあの・・』
パニックになる私をよそに、その男の子は話を続ける。
『あんた、名前は?』
『吉本 泉智と申します。。
あなたは…?』
『伏黒 恵』
『あんたに会って欲しい人がいる。◯月★日正午、空いてるか?』
『えっと…その日は学校も休みですし、多分大丈夫だと思います。』
『分かった。これ俺の連絡先だから、なんかあったら連絡くれ。じゃあな』
男の子…いや、伏黒君はクルッと踵を返し、歩いて行く。
・・そういえば助けてもらったお礼を言えてない!!!
『伏黒くーーーーん!!!
助けていただきありがとうございましたぁあ!』
お腹の底から精一杯声を出し礼を言うと、伏黒君はこちらを向かず片手を挙げて応えた。
突然呪霊とやらに襲われ、突然お前は呪いが見える体質だとか言われ、突然お前に会って欲しい人がいるだの言われ、全てが突然過ぎてもう何がなんだか・・
とりあえず、◯月★日にゆっくり話を聞くことにしよう。
私はまた、いつにも増して寒い帰り道を歩いて行く。