第3章 宿儺◎
『ゴクンッ』
なんとか無事辿り着けたが様子がおかしい。
『今…虎杖君…ゴクンッて…宿儺の指を飲み込んだ…』
私は恐怖で声にならない声を出していた。
"ヤバい。虎杖君死んじゃう!!!どうしようどうしよう"
私は虎杖君に飲み込んだ宿儺の指を吐き出させるため、傍まで行こうとした。
『行くな泉智!!!
このまま受肉してしまったら、俺もお前も死ぬぞ!!離れろ!』
恵君に制され、少し離れた所で立ち止まった。
ードゥゥウウウンー
砂埃が風に流れ、開けた視界の先には、先ほどまで恵君と虎杖君が戦っていた呪霊の亡骸が転がっていた。
ゲラゲラゲラゲラ
『ああ やはり!光は生で感じるに限るなあ!!
呪霊の肉などつまらん!人は!女はどこだ!!』
そこには大声を出す明らかに虎杖君ではない誰かがいた。
身体には先ほどまでなかった紋様、声も違う…
ー宿儺が受肉したんだ!!!ー
『泉智、逃げろ!ここから離れろ!!
お前がどうにかできる相手じゃない!』
正直逃げたかった。怖かった。
でも、ここで逃げたら今までの弱い自分と変わらない。
私は今までの自分とは違う!!!
『ありがとう恵君!!
でも、ここで逃げたら、あの時私を助けてくれた恵君に恩返し出来ないから!!!
私が宿儺の気を引くから、その間に恵君は逃げ・・』
ードタッー
…何が起こったの?
背中が痛い…
誰かに倒された…?
一瞬のことで、何が起こったのか分からなかった。
目を開くと、そこには気持ち悪いほどニヤけた宿儺がいた。
『こんな近くになかなか上物の女がいるじゃねえか』