第8章 後遺症◎
『生きて帰れて本当に良かった…
ありがとう、虎杖君』
生還の嬉しさから、バンジージャンプ後のような発言をしてしまう。
『大袈裟だよ』
虎杖君は少し照れ臭そうに、下を向きながら言う。
無言の時間が続いたかと思うと、突然虎杖君が私の手を引き、歩き出す。
"え?!これ、お化け屋敷に向かってる…?!"
私はお化け屋敷が大嫌いだ。
小学校の卒業遠足が遊園地だった。友達のいない私は、一人でベンチに座って本を読んだり、たまにゲームセンターに入ったりして時間を潰していた。
しかし、私をいじめのターゲットにしていた男子達にからかわれ、一人でお化け屋敷に入ることになってしまった。
恐怖のあまり、途中で気絶してしまった私は救護室へ連れて行かれ、先生にこっぴどく叱られるという事があったのだ。
だから、お化け屋敷は嫌い・・・
『虎杖君ごめんなさい…
私お化け屋敷はちょっと…』
そう言いかけると、虎杖君はお化け屋敷ではなくその裏の人気のない裏道へと入って行く。
『…どうしたの?!』
ーガバッー
突然虎杖君に力強く抱き締められる。
『どうしても吉本のこと抱き締めたくなった…
どこ行っても人が多いから…ごめん…』
『…大丈夫だよ。ありがとう。』
力強いのに、優しくてちょっぴり切ない抱擁…
虎杖君の温もりや匂いがとても心地よい。
『もう少しだけ…こうしてていいか…?』
『うん…。大丈夫だよ。』
どれぐらい抱き締められていただろうか。
『吉本、ありがとな』
虎杖君が沈黙を破る。
『こちらこそありがとう。
虎杖君、私、今日本当に幸せだったの。虎杖君のおかげだよ。
いつも私を守ってくれたり、勇気付けてくれて、本当にありがとう。』
私は虎杖君への感謝を伝える。
宿儺という呪いの王を自身の中に秘め、いつも危険と隣り合わせだ。
もし自分がその立場だったら、人を励ましたり、人を助ける余裕はないだろう…。
虎杖君は本当に強い。強くて…優しい。
虎杖君は私を解放し、両手で私の頬を包み込み、いつになく真剣な顔付きで話し始める。
『吉本、頼むから無茶すんなよ。
何かあったら絶対に俺を呼べ。遠慮なんかするな。俺がいつでもお前を守ってやるから。
…俺はお前にずっと傍にいて欲しい。これから先もずっとずっと…』
『へ…?』