第8章 後遺症◎
辺りがオレンジ色に染まり始めた。
『今観覧車乗ったら夕日綺麗だと思うけど乗る?』
『う…うん…』
私は高所恐怖症なので、観覧車には生まれてこのかた乗ったことがない。
でも、虎杖君の誘いを無下には出来ず渋々承諾する。
観覧車に乗り込み虎杖君と対面で座るも、怖さのあまり落ち着きがなくなってしまう。
『悪りぃ!そういえば吉本、高所恐怖症でこの前もロープウェイ乗ってないよな?!
本当ごめん…』
『大丈夫だよ!
・・・でもごめん…やっぱり隣に座ってもいい…?』
『応!』
恐る恐る立ち上がりながら、虎杖君の隣へと座る。
『怖いから…その…手を握っていてもいいかな…?』
『もちろん!ほら!!』
虎杖君は私の手を握り締めてくれた。
温かくて力強い手…たくさんの不安や悲しみ、怒りを握り締めてきたのだろう。
『吉本、こっち向ける?』
手を握り俯いたままの私に虎杖君が言う。
『顔を真っ直ぐにして、周りの景色見てみ?めちゃくちゃ綺麗だから!!!
下は絶対見るなよ?』
そう言われ、私はゆっくりと顔を上げて景色を見る。
『わぁ〜!綺麗…』
夕日によってオレンジ色に染まった幻想的な世界が目の前に広がっていた。
すると突風が吹き、観覧車が大きく揺れる。
『怖いっ!!!』
私は俯きギュッと目を瞑った。
『なあ吉本…』
虎杖君に名前を呼ばれ、恐る恐る顔を上げる。
"虎杖君…ちっ近い……"
『俺の顔見てれば怖くないだろ?』
恥ずかしさのあまり目を逸らそうとすると、両手で頬を包まれる。
『目ぇ逸らすんじゃねえよ』
『どっ…どうしたの?!』
虎杖君の顔がどんどん近付いてきて、キスをされる。
唇が触れる優しいキス・・・。
『んっ…』
こんなにも優しいキスなのに、身体中の血液が激しく流れるような感覚に襲われる。
ーチュッー
『今は景色なんて見ずに、俺だけ見てろ』
すると、再び虎杖君のキスが降ってくる。
次は先程とは違い、口内に舌が入ってくる…激しいキス…
『んんっ…いたどりくぅん…』
『こうしてたら怖くないだろ?』
観覧車が地上に到着するまで、虎杖君のキスは止まらなかった。
高鳴りが止まない心臓…
あのキスは私の恐怖心を和らげるためだったんだと、そう自分に言い聞かせた。