第7章 傾覆
私は部屋へと戻り、震える身体を落ち着かせる。
恵君があんなに怒っている姿を見た事がなかった。
ただただ怖かった。
いつも優しくて気にかけてくれる恵を、あそこまで怒らせてしまった自分が怖かった。
『そういえば、五条先生部屋来てって言ってた…』
私は先生から呼ばれていた事を思い出し、気持ちを切り替えて先生の部屋へと向かう。
ーコンコンッー
『失礼します…』
『おい〜!!吉本おっせーぞ!!』
『泉智どれだけ待たせんのよ!』
『おかか〜』
あれ?みんな集まってる…?
『お集まりいただきましてありがとうございます』
五条先生が嬉しそうに言う。
『君たちにはつまんないかもしれないけど、学生旅行っぽく肝試しでもしようかと思ってね』
『『『はあ?!』』』
みんなが一斉に言う。
『悟だけで行けよ!
私たちは疲れてるから寝たいんだよ!!!』
『そうよ!
私たちお化けなんて見ても怖くないし!』
『優勝した方には…
某テーマパークのチケット差し上げま〜す』
『『『やる』』』
"…さっきまでやらないって言ってたのに…
これじゃ五条先生の思う壺じゃん…"
みんなの手のひら返しに驚いてしまった。
『ペアになって、この鳥居をくぐり、真っ直ぐ歩いて本堂の前で手を合わせて戻ってきてもらいます。
競うのは行って戻って来た時間ね!!
ペアはあみだくじで決めまーーす!』
そう言うと、先生は手作り感満載のあみだくじを出す。
下の部分に全員が名前を書き入れていく。
"ペアすごく緊張する・・・
誰でもいいけど、、なんとなく女の子がいいな…"
『え〜っと…
悠仁と野薔薇!
パンダと真希!
棘と…僕!
恵と泉智!』
『えっ…?!』
"最悪だ・・・
恵君を怒らせて、あんな事があった後なのにペアだなんて…
ほんっっとに運が悪すぎる・・・"
"先生に体調が悪いと断ろうか…
でもそんな事したら恵君を余計に怒らせてしまうかもしれない…"
そんな事を考えていたら、私たちの順番になってしまった。
暗闇を2人無言で歩いて行く。
ーバアァアアアー
『きゃあ!!!』
途中五条先生が仕掛けたであろう人形が飛び出して来て驚き、咄嗟に恵君に抱き着いてしまった。
『ごっごめんなさい…!!』