第7章 傾覆
はぁ…と肩を落とせば、隣にいた棘先輩が不思議そうな顔でこちらを見ている。
『ごっごめんなさい…』
私は咄嗟に謝罪する。
『なんで謝るの?』
『?!?!』
棘先輩がおにぎりの具以外の言葉を話しているのを初めて見た。
驚きのあまり、言葉を失う。
・・・きっと慎重に、私を傷付けないように言葉を選んで話してくれてるんだ…。
『元気出して』
先輩が優しく囁けば、少し元気が出たような気持ちになった。
『棘先輩いつもありがとうございます…
たくさん助けてもらってて、感謝しかありません…』
私がそう言うと、棘先輩は両手で私の頬を包み込んでくれた。
棘先輩は私が不安な時、いつも傍にいてくれる。
別に恋愛とかそんなんじゃなく、私は棘先輩が大好きだ。
お兄ちゃんのようなそんな存在…
『ねえ2人で何してるの〜?』
五条先生に言われ、なんでもありませんと離れる。
『五条先生…
ご飯、とっても美味しいですっ』
先生が用意してくれたプラン、ご飯も美味しいし、露天風呂も気持ちが良くて最高だし、身体をしっかり休められる。
『みんなが頑張ったご褒美だよ!』
先生はとびきりの笑顔でそう言ってくれた。
ドキリと跳ねる心臓・・・
かと思えば、次は私の耳元で囁く。
『誰よりも頑張った泉智には、もっとご褒美が必要?』
『!!!』
耳に当たる五条先生の吐息で声が出そうになってしまった。
多分顔は真っ赤だろう、鏡を見なくとも分かる。
『夜ご飯楽しんでね〜!』
先生は私に手を振ると、他の席へと行ってしまった。
"先生にドキドキしちゃうなんて、私おかしい…"
そう思いながら、キュッと浴衣の胸元を掴んだ。
『泉智!今日はお疲れ様!』
釘崎さんがかんぱ〜い!とジュースの入ったコップをカチンとぶつける。
『貸切風呂入った?最高だったわよ!
夜景はさらに綺麗らしいから、オススメ!美肌効果もあるらしいわよ』
『そうなんだ!まだお部屋の露天風呂しか入ってなくて…
後で行ってみるね』
私がそう言うと、釘崎さんは是非〜と言いながら真希先輩の所へ行ってしまった。
ふと気になり恵君に目をやると、虎杖君と何やら話していた。
"私のことでも何か話してるのかな…"
そう思いながら、私は無言で夜ご飯をひたすら食べた。