第7章 傾覆
『泉智のおばあちゃんは呪術師だったんだよ、泉智と同じ呪符使い。
前におばあちゃんからの手紙を読んだ時に、高専に行けと書いてあって、僕はそれがずっと引っかかっていてね。
そこで、伊知地に調査を依頼したんだ』
『それで?』
禪院先輩が聞く。
『泉智のおばあちゃんは高専の卒業生で、その後高専で教師をしてたらしい。』
みんな五条先生の話を食い入るように聞いている。
『高専で教師をしている時に、ご主人に出会ったらしい。
んーと、泉智のおじいちゃんに当たる人だね!
その当時、泉智のおじいちゃんは最強だと言われていたぐらい強かったんだって。まあ僕ほどではないと思うけど!』
ニヤニヤする五条先生をみんなシカトし、早く続きを話してくれと言わんばかりの顔をしていた。
『でもね、
おじいちゃん、悪に転じちゃったんだって』
『!!!』
悪に転じた?!
高専関係者で悪に転じたのは夏油傑だけだと思っていた…
まさか泉智のおじいちゃんが…
『自分の仲間、そして奥さんを守るためにね』
いつもふざけている五条先生が、いつになく低いトーンで言う。
『それで、じいちゃんはどうなったんだよ』
禪院先輩が再び聞く。
『奥さんが封印したらしい。
・・・どんな想いだったんだろうね、自分の愛する人を封印するって』
『泉智はその事を知っているんですか?』
『知らない。おじいちゃんは泉智が産まれる前に封印されてるんだ。
さっき本人に聞いたら、自分が産まれる前に事故で死んだと言ってたよ』
さっきバスで話してたのはその事だったのか…。
『僕が危惧してるのはね、悪に転じた者が近親者にいること。
一つ目は、何らかの手違いで封印が解かれてしまった場合、泉智に危害を加える可能性があるということ。
もう一つは・・・
泉智が悪に転じてしまう可能性が大いにあるということ』
『でも、じいちゃんと泉智は別物だよな?』
パンダ先輩が口を開く。
『遺伝って怖いんだよ。どこでどのように出るか分からない…
だから、そうならない為にも僕たちは泉智に言い続けないといけないんだ。
目の前で仲間が苦しんでいようとも、自己を犠牲にしてはいけないと』