第7章 傾覆
『先輩…大丈夫ですか…?』
『お前ビックリさせてんじゃねえよ!
・・・でも、ありがとなっ』
真希先輩に頭をクシャクシャと撫でられる。
『泉智強くなったなぁ』
『しゃけ』
パンダ先輩、棘先輩も私を褒めてくれた。
『先輩がたくさん特訓してくださったおかげです。
近接戦は壊滅的だったので…。あとはこの呪具に感謝です。』
私は先輩達に深々とお辞儀をした。
『…ッツ…』
お辞儀をした瞬間、腰に痛みが走る。
押さえてみると、掌に少し血が付いていた。
"さっき呪霊の攻撃をかわせずに怪我しちゃった所だ・・・
でも、あの攻撃を受けていてこの程度の怪我で済むのはおかしい…"
そう思いポケットの中を確認してみる。
『さっき虎杖君が返してくれたハンカチ…』
バスの中の事を思い出すーー
虎杖君は私の隣に座ったかと思うと、私に何かを差し出す。
『悪りぃ、なんか俺がずっと持ってたみたいでさ…』
クシャクシャになった何かを手に持ち、ばつが悪そうな顔をしながら言う。
『これ…』
以前虎杖君がプレゼントしてくれたハンカチだった。
実地試験の時にダメにしてしまった祖母の形見のハンカチを、虎杖君が新しくプレゼントしてくれたもの・・・
『ずっと探してて、どこにもなかったから諦めてたの…
本当にありがとう。』
祖母の肩身というのもあったが、虎杖君がプレゼントしてくれた物だったので、なくしてしまった事がかなりショックだった。
だから戻ってきた事がとても嬉しく、笑みが溢れてしまう。
『ごめんな、俺もなんで自分が持ってたのか分かんなくてさ…』
虎杖君は頭をポリポリと掻きながら申し訳ない顔で謝る。
そんな事を思い出しながら、私はハンカチを見る。
"これがポケットに入っていたから、深い傷を負わずに済んだんだよね…。
ありがとう虎杖君、ありがとうおばあちゃん…"
私はハンカチを両手で包み込み、お礼を言う。
『吉本怪我してんじゃん!!』
虎杖君が私に駆け寄り、心配そうな顔で言う。
『これのおかげで、深い傷にはならなかったの。
虎杖君ありがとう!!』
私は虎杖君の手を取り、感謝の意を伝える。
『そのハンカチって・・・』
『?』
虎杖君の隣で五条先生が何か言うも聞こえず、私も虎杖君もハテナ顔で先生を見る。
『…いや、何でもないよ』