第7章 傾覆
『おい泉智!やめろ!!』
真希先輩の声を背に、私は走り出していた。
怒りなのか使命感なのか、何だか分からない気持ちが渦を巻いていた。
ただ、"戦わなくちゃいけない"その一心だった。
『今度は私の番』
今まで出した事のないほど冷たい声で言い放ち、私は呪霊の右肩を呪具で斬り付ける。
『ギャアアア!!』
右肩を押さえながら叫ぶ呪霊。肩で息をしながらしゃがみこみ、下から私を見上げ睨み付ける。
突然呪力を飛ばしてきたが、私は大きく飛んで避ける。
しかしその隙をつかれ、呪霊は先輩達の元へと猛スピードで駆けて行く。
"ヤバい!!このままじゃ丸腰の先輩達がやられてしまう…!"
私は得意のスピード力を活かし、呪霊の前に回り込む。
『呪操符守界張…』
そう唱えると、先輩達の周りに大きな結界が張られる。
先ほどパンダ先輩に施した結界とは比べ物にならない大きな結界・・・
『でっ…できた……』
私は一人呟く。
自分自身に使う結界や、単体の人物に対する結界は今まで張ることができていた。
しかし、こういった大勢での場合には適さなかったため、私は大勢の仲間を取りこぼす事なく結界内に入れられる術を特訓していたのだ。
ただ、大切な仲間を守るために…
『お前…こんな事出来るなんて聞いてねえよ…』
真希先輩がそう言うと、棘先輩、パンダ先輩も驚きの目で私を見る。
『ズルしないで、あんたの相手は私だけだから』
そう呪霊に言うと、呪具を投げ付ける。
投げ付けた呪具は呪霊の左脚を吹き飛ばした。
『ギャアアアァアアア!!!』
呪霊はそう叫ぶと、その場に倒れ込む。
トドメを刺そうと呪霊に近付く。
すると、突然呪力を飛ばされ、私の腰辺りをかすめる。
『・・・ッツ…』
少しよろけたが、大怪我ではないようだ。
『呪操符攻斬撃…』
私の攻撃を受け、呪霊は消え去った。
"はっ祓えた…"
私はその場に座り込む。
ーパチパチパチパチー
拍手の先を見ると、そこには五条先生と1年生のみんながいた。
『泉智おめでとう、格上倒したね!』
『泉智があんなに強かったとは思わなかったわよ…
見直した!!!』
五条先生に続けて、釘崎さんもそう言ってくれた。
『ありがとうございます…』
"あ!先輩達は大丈夫かな?!"
私は先輩達に駆け寄った。