第5章 4. 監督生の溜息
「フロイド、貴方の部屋ということは同時に僕の部屋であることをお忘れですか?」
「いいじゃん。今からゲストルーム準備すんのもめんどくせーし、寝かすのはオレのベッドだし、何か問題でもあんの?」
「やれやれ……。シェラさんはとても静かに眠る方ですし、フロイドが構わないのなら良いでしょう」
むくれるフロイドに、ジェイドは困ったように笑いながら肩を竦める。
同室のジェイドが了承したことにより、シェラは知らぬ間にふたりの部屋で寝かされることになった。
しかしそれに、グリムは待ったをかけた。
「待てフロイド。オマエ、シェラに何するつもりなんだゾ……!?」
焦った様子でグリムはフロイドに詰め寄る。
グリムがこう言ったのは、フロイドと一緒に過ごした後のシェラは普段と様子が違うのを見ていたからだった。
きっと、フロイドはいつもシェラに意地悪をして疲れさせているに違いない。グリムはそう思っていた。
「別になんもしねーし。ただ寝かせるだけ。なに?アザラシちゃんはオレが小エビちゃんに何かするとでも思ってんの?」
心外だ、とでも言いたげにフロイドは眉を下げる。
そんな表情をしながらも、瞳は危険な色が見え隠れしていた。
耐性がない人であれば震え上がりそうな圧をフロイドは放つが、グリムは臆せずに噛みつく。
「オマエなら何かしそうなんだゾ!」
「何かって、ナニ?」
「それは……っ」
面白がってにやにやと笑いながら追及するフロイド。
なに、と聞かれても具体的には何も浮かばないグリムはたじろぐ。
「そんなに小エビちゃんのことが心配なら、アザラシちゃんもオレらの部屋で寝る?猫1匹増えたところで別に構わねぇし。ねぇ?ジェイド」
「ええ、フロイド。この季節、グリムさんと一緒にベッドに入ったら暖かいでしょうね」
冬場に猫と一緒に寝ると暖かいという話を誰かに聞いたのだろうか。
その状況を想像しているであろうジェイドは、ほくほくとした表情で言った。
グリムのことを完全に猫扱いしながら、フロイドとジェイドは話を進めようとする。
「ふなっ!?オ……オレ様はそこのソファで良いんだゾ……!」
当のグリムは全力で頭を横に振って、すぐそばのソファを肉球で示した。
「そうですか、それは残念です。……では、グリムさんには後ほど毛布をご用意しますね」
「オ、オウ……」