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泡沫は海に還す【twst】

第4章 3. ヴィランのルージュ


包装を破くことに成功すると、シェラはフロイドに向かって口を開けるよう頼んだ。
なお、ここでもシェラの表情は変わらない。

「はぁ……っ!?やだ!なんで!?」
フロイドは再び顔を赤くして拒否する。
〝綺麗〟と褒めてくれた時よりもずっと恥ずかしがっている。
口を開けるだけなのに何がそんなに恥ずかしいのか。
もしかして虫歯でもあるのか、とシェラは眉を顰める。

「なんでそんなに嫌がるんです。虫歯でもあるんですか?別にフロイド先輩のお口の中チェックなんてしませんよ」
「虫歯なんてねーし!」
「なら一瞬くらい、いいじゃないですか」
虫歯がないのなら、尚更嫌がる理由が分からない。

シェラは、口を開けさせようとしてフロイドの顎を掴んだ。
無理やり壁際に追いやられたから、これくらいはおあいこだろう。
しかもシェラはその時壁に頭と背中をぶつけて痛い思いもしている。尚のことこれくらいは許されるはずだ。

「やだ!」
唇を引き結んで頑なに拒否するフロイド。
嫌がり方が歯医者を嫌う小さな子どもみたいだ。

ただ口を開けるだけなのに、何故こんなにも嫌がるのだろうと疑問に思うシェラ。
しかしフロイドからしたら、何故こんなことをさせるのだろうと思わずにはいられなかった。
あーんと口を開ける行為がフロイド達ウツボにとってどんな意味があるのか、分かっていないのはシェラの方だった。

「そんなに嫌なら仕方ありませんね」
あまりの嫌がりように、シェラは口を開けさせることを諦めた。
やっと諦めてくれたかと、僅かに安堵の表情を見せたフロイド。
軽く溜息をつくと、シェラはフロイドの顎から手を離し、引き結ばれた唇にポケットから出した〝それ〟を、ちょん、と押しつけた。

「?なにこれ?キャンディ?」
唇につけられたそれから微かに甘い味を感じとったフロイドは、シェラの手からそれを取った。
棒をつまむようにして持ちながら首を傾げている。

「はい。この間の飛行術のお礼です」
「ウツボのキャンディだぁ!」
フロイドの顔がぱあっと輝く。

「尾びれのキャンディというそうですよ。サムさんが教えてくれました」
「そうなんだぁ。ふふっ、小エビちゃん、ありがと!」
律儀なシェラはフロイドにお礼を用意していた。
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