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泡沫は海に還す【twst】

第4章 3. ヴィランのルージュ


「おま……っ、せっかく素直に褒めたんだから、もっと良いリアクションしろよな……!?」
「そっ、そうだぞ!僕達だけ恥ずかしいじゃないか!」
「いやだって、そんなこと言われても……」
元々表情筋が硬く、ポーカーフェイスなシェラにとって、咄嗟に100点のリアクションをしろと言われても無理な話だ。

「エースもデュースも顔が真っ赤なんだゾ!」
シェラの腕の中のグリムがエースとデュースを茶化すようにして笑った。

「うるせーぞグリム!」
「み、見るな!」
エースとデュースとグリムが騒ぎ始める。入学してから今日まで、何度も見たこの光景。
またか、と思ったが、何だかんだ見ていて面白いし、楽しんでいる自分もいる。

ふと、このふたりがいてくれたから自分とグリムは学校生活に馴染めて楽しい時間を過ごすことが出来たんだなと思った。
魔法が使えない異世界人な上に、学園唯一の女子生徒。
腫れ物を扱うような対応をされてもおかしくないのに、ふたりは入学してから一貫して他の生徒と同じように接してくれている。
それどころか、今となっては〝マブ〟だと言ってくれている。

「エース、デュース」
エースとデュースが素直になってくれたのだから、ここは自分も素直になろうとシェラは思った。

「ありがとう」

表向きは式典メイクを褒めてくれたことに対して、その実は日頃の感謝を込めて。
ゆっくりと花の蕾が綻ぶように笑ったシェラ。
その顔を見たエース達は他愛ない口喧嘩を辞めると、『おうよ!』と、明るい悪友の笑みを浮かべた――ところで、それまでの穏やかな空気をぶち壊すような声が背後から聞こえてきた。


「あぁーーー!金魚ちゃん!!」
「この声は……」
リドルとシェラは顔を見合わせて眉を寄せる。
トレイとケイトは苦笑しながら首を横に振っていた。
エースとデュースは『またか』という顔をして頭を抱える。
グリムは声に驚いてシェラの腕から飛び降りた。

近づいてくる靴音は3つ。
『小エビちゃん』とは言っていなかったから恐らくまだシェラの存在には気づいていない。
シェラはサッとフードを被って顔を隠し、背の高いトレイの陰に隠れながらこっそり様子を伺う。
例の悪徳3人組が揃ったところに会するのは、アトランティカ記念博物館ぶりだ。
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