第3章 2. 青空の涙
昨日はアズールに叱られると言ったら応じてくれた。
「ロブスターせんせぇなんてどーでもいいし。それよりカニちゃん達から聞いたけど、小エビちゃんだけひとりで罰ゲームなんてつまんなくね?」
「罰ゲーム?……あぁ」
フロイドの言う罰ゲームとは空を飛べないシェラ用のバルガスの特別メニュー。
ついに罰ゲーム扱いになったのかと、シェラは思わず苦笑いを浮かべそうになる。
「小エビちゃんも空飛びたくない?せっかく二人乗りの授業だからさぁ、小エビちゃん後ろに乗せたげよーってオレ楽しみにしてたんだぁ!」
そう言ってフロイドは無邪気に笑う。良くも悪くも素直なフロイドは忖度無しでそう言っているのだろう。
にこにこと笑う姿に、授業前の上機嫌なフロイドが重なった。
(授業前に機嫌が良かったのって)
フロイドの言葉をそのまま捉えると、シェラを後ろに乗せて空を飛べることを楽しみにしていた、ということになる。
ただ自分がサボりたいから攫ったのではなく、シェラにも箒に乗って空を飛んで欲しかったからだと解釈すると、胸中で炎上しそうだった怒りの感情が徐々に消火されていった、
それどころかこう素直だと、怒る気にもなれなかった。
素直なフロイドの言葉に、ゆるゆると力が抜ける。
「そう、だったんですね。でも、そう思ってくださったのなら、なおさらメニューの途中で拉致するんじゃなくてバルガス先生に許可を取って普通に迎えに来てくださった方が嬉しかったんですが……」
シェラを後ろに乗せたいのなら、バルガスの特別メニューを終えるまで待っていればよかったものを。そう思ったが、きっとフロイドのことだからそれまで待てなかった、いや、待たなかっただろう。
どう転んでも拉致するようなかたちで走るユウを捕まえていた気がする。
「えー、ロブスターせんせぇのことだからぜってー小エビちゃんが罰ゲームを終わらせるまでダメだーって言いそうじゃね?そんなん時間もったいねぇじゃん。せっかく2限分時間あるんだし、小エビちゃんもいっぱい空飛びたくね?」
シェラの想像していた通りの言葉がフロイドの口から出る。
本当に自由なひとだ。
だが、フロイドはシェラにも空を飛んでみてほしいと思ってくれている。それは純粋に嬉しかった。