第13章 9. 夜半の求愛 ※
引き攣るシェラの頬にフロイドは、ちゅっ、と可愛らしいキスをした。
「ね、小エビちゃんがいいよって言ってくれたから激しくしちゃったけど、どっこも痛くない?大丈夫?」
右手でシェラの細い腰を労わるようにさすりながら、フロイドは不安げにそう訊いてきた。
「はい。どこも」
さすられた腰からフロイドの体温を感じ、今更ながら先程までフロイドに抱かれていた事実を思い出して身体が熱くなる。
掛布で改めて素肌を隠しながら、シェラは平静を装って返事をした。
「そっか。よかった」
シェラから大丈夫だと伝えられると、フロイドは安堵の微笑みを見せた。
下がった目尻を更に下げてふわりと笑うフロイドは、本当に可愛らしいと思う。シェラはこの笑顔に弱かった。
肌を重ねている時に見せた、雄の本能を剥き出しにしたような表情との差に、シェラの胸がきゅっと締めつけられる。
「……どうでしたか?」
フロイドの柔らかな頬を撫でながら、シェラは控えめに訊いた。
「ん?どうって、どゆこと?」
「え?だから……その……、気持ちよかったとか……、思ってたのと違ったとか……」
シェラの語尾がフェードアウトしていく。
まさか聞き返されるとは考えておらず、シェラは段々と恥ずかしくなってきてしまう。
同時に、なんてことを訊いているんだ、なんて思ったが、自分の身体に自信が無いシェラにとって、先程のセックスがフロイドにとって満足のいくものだったのか、どうしても不安になってしまうのが本心だった。
「ああ、そゆことね。……クセになりそぉ」
シェラの質問の意図を理解したフロイドは、意地悪く口角を上げながら答えた。
「……本当にあなたはデリカシーという言葉を覚えませんね……」
少しの間の後、シェラは呆れたような口調で言った。
とりあえず満足してくれたのは良かったが、答え方がいかんせんいやらしい。
ニヤニヤしながら顔を近づけてくる、いつもの調子のフロイドの頬を反射的にぺちんとはたいてしまった。
「いてっ。だってほんとーのことだもん。交尾してる時の小エビちゃん、いつも以上にすっげー可愛いし、気持ち良いし、幸せすぎてオレどーかなりそうだと思ったもん」
本当のことを言っただけなのに心外だ、とでも言いたげにフロイドは頬を膨らませる。