第13章 9. 夜半の求愛 ※
全身が粟立つような、ゾクゾクするような感覚に襲われ、身体に力が入る。
無意識に腰がうねり、フロイドの下腹部に押し付ける。
「すき」
「ん……っ」
「すーき」
「あぁ……やめ……っ」
耳元で囁かれるとゾワゾワする。
フロイドはそれをわかってやっている上に反応を楽しんでいる。
なんだか揶揄われているような気がして、シェラはフロイドを軽く睨む。
上体を起こしたフロイドはシェラを見下ろす。
「あは、ちょーえっちな顔。たまんねぇなァ……、ゾクゾクする」
頬を紅潮させながら瞳に涙を浮かべるシェラを見て、フロイドは低く響く声でたまらないと言いながら舌なめずりをする。
その様子がひどく色っぽく、シェラは身震いしそうになった。
執拗に耳を愛撫していた舌が、シェラの細い首に這う。
つ……となぞる様にして舌が這ったと思ったら、貪るように首筋を舐められ吸われる。
「ん……っ。あぁ……っ」
シェラが静かに声を上げていると、喉元と首筋を舌で丁寧に愛撫するフロイドの手が、シェラのネグリジェのボタンに降りた。
「あ……っ、ちょ、まっ……」
消え入りそうな声でシェラは制止をかけるが、フロイドの手は止まらない。
やがて全てのボタンを外しきると、身頃の隙間からシェラの白い肌が覗いた。
まるで、沈没船で陸の宝物を見つけたときのように。
フロイドの興奮した様子が見て取れる。
フロイドの手が、シェラの身体を覆う布をどけようとした時、シェラは咄嗟にネグリジェを合わせ、自身を抱くようにして肌を隠した。
「……だめ?」
耳を齧っていた時の鬼畜な様子はどこへやら、フロイドは可愛らしく、こてん、と首を傾げた。
物欲しそうにシェラを見つめている。
「いえ、その……そうではなくて……」
答えを濁すシェラ。
だめではない。だめではないが、少し待ってほしい。
行為を了承するのに心の準備はいらなかったが、〝これ〟には心の準備がいる。
「恥ずかしいの?」
シェラが躊躇うのには理由があると、フロイドはあの2人乗りの飛行術の時に学んだようだ。
煮え切らないシェラの態度にも機嫌を傾けることなく、どうしたら不安を取り除くことが出来るか考えている様子が伝わってきた。