第13章 9. 夜半の求愛 ※
交尾。
生々しく直接的な、セックスを表すその言葉に、全身の熱が顔に集まるようだった。
身体が熱い。腹の奥が疼く。今まで感じたことの無い欲が頭をもたげたのを感じた。
シェラはフロイドの頬に触れながら、すっと目を細める。
そういうつもりで部屋に呼んだのではなかった。
しかし、そういうことになるかもしれないと全く思わなかったわけではない。
世の乙女は心の準備が――……なんて言うが、悪ふざけの延長でディープキスをしてしまうような悪党が今更何を言うか。
シェラはこのままだと、きっといつかこの世界からいなくなる。
それはずっと後かもしれないし、明日かもしれない。
今日フロイドのそばにいれたからといって、明日もそうだとは限らない。
ならば、触れ合える時に触れ合い、愛を伝え、肌を重ねたい。
躊躇う理由なんて、シェラにはなかった。
「……はい」
シェラがこくりと頷く。
フロイドは幸福と情欲を半々に宿した瞳でシェラを見つめると、嬉しそうににっこりと微笑んだ。
そしてシェラの脚をすくうと、するりと靴を脱がせ、自身もそうした。
素足が引っ掛けたシーツのなめらかな感触が、妙に生々しく感じた。
フロイドは官能的に瞳を揺らしながら、シェラに覆いかぶさりキスをする。
フロイドの大きな身体にすっぽりと包まれるようにしてシェラはフロイドと唇を交わす。
広くて頼もしい背中に腕をまわすと、それに応えるようにしてフロイドもシェラの細い身体を抱いた。
フロイドの身体は大きくて重たいはずなのに苦しくない。むしろ心地よい重さだと思った。
体重がかかりすぎないようにちゃんと考えてくれているのだろう。
ふいにフロイドの唇が離れ、そのままシェラの耳を食んだ。
シェラの身体がビクッと震える。
「ひ……っ、あぁ……っ!」
「小エビちゃん、耳弱いもんね?」
耳珠を唇で食まれ、耳殻をそっと舌で刺激されると、シェラの喉からあられもない声が洩れた。
「みみは……っ、や……っ!」
フロイドは身体を押し返そうとするシェラの手を捕まえ、抵抗出来ないようにベッドへ縫いつけた。
耳殻を甘噛みされる。
耳孔に、ふっ、と息を吹きかけられ、舌が侵入してくると、いやらしい水音が鼓膜に響いた。