第12章 8. 愛の狩人
やがて、シェラは足を止めた。
扉のそばのプレートに〝JADE LEECH〟〝FLOYD LEECH〟と書かれている。
大きく息を吸って吐くと、シェラは意を決して扉をノックした。
「フロイド先輩こんにちは。シェラです。入ってもいいですか?」
扉越しに声をかけると、『うん。いいよぉ』と、フロイドは快諾してくれた。
もう一度大きな深呼吸をし、シェラはドアノブに手をかけると、先に扉が内側から開けられた。
シェラが扉を開けるよりも早く、フロイドが招き入れようとしてくれたらしい。
「失礼しま……、……っ!?」
その瞬間、シェラの顔がエビのように真っ赤に茹だる。
入室したシェラの目に飛び込んできたのは、素肌の上半身に寮服のシャツを羽織っただけの半裸のフロイドだった。
日焼けとは無縁の白い肌にパープルのシャツが映え、ひどく色っぽい。
「小エビちゃん、いらっしゃあーい!」
シェラが来てくれたことが嬉しかったのか、フロイドはご機嫌な笑顔を見せてくれる。
自らの格好については毛ほども気にしていない。
「す……、すみません……っ。着替え中とは知らず、失礼しました……っ!」
勢いよく目を逸らしたシェラは1歩後退ると、一旦退室しようと扉の影に入ろうとした。
が、そんなシェラの手を、フロイドは掴んで引き止めた。
「なぁにビビってんの?出てく必要ねーじゃん」
ずん、とフロイドはシェラが後退った1歩を大股で詰める。
至近距離にフロイドの素肌の胸が迫り、さらにシェラは顔を赤くする。
「ちょ、その格好で近寄らないでください……っ!」
「えー?小エビちゃんひどぉい」
未だにシェラが動揺している理由が理解出来ていないフロイドは、唇を尖らせて不貞腐れて見せた。
シェラはフロイドに掴まれた腕を振りほどこうとする。
しかし、力でフロイドに敵うはずがない。
一応下半身はちゃんと下着を履いているが、いかんせん肌色が多くて目のやり場に困る。
フロイドの生脚は初めて見たかもしれない。そして今更であるが、やたら腰の位置が高い。
一瞬見ただけでも、シェラと股下の――脚の長さが20センチ以上違いそうだ。
「だって、着替え中じゃないですか……っ!」
「?うん。そーだけど、それがどうしたの?」