第12章 8. 愛の狩人
「彼は自分の気持ちに素直なんです。その素直さが、私にとってはとても眩しくて、魅力的でした」
気分屋でめちゃくちゃで相手を振り回すような面も、裏を返せば自分の気持ちに素直であると言える。
嬉しい時や楽しい時には笑い、腹が立ったら怒り、悲しかったら落ち込む、喜怒哀楽が誰よりも分かりやすい。
何を考えているか分からないと言われがちなシェラにとって、その素直さは憧憬の対象であり、強く心を惹かれた。
「今更ですが、私は無愛想で口下手で自分の感情を相手に伝えるのが苦手です。でも、彼は、そんな私の気持ちを汲み取るのがとっても上手で……、私が悲しい時には黙ってそばで静かに泣く場所を作ってくれるような優しさを持った方なんです」
感情を表に出すのも、甘えるのも下手なシェラが唯一、感情をさらけ出し甘えることの出来る存在、それがフロイドだった。
好きなところを口に出せば出すほど、自分がどれだけフロイドのことを想っているのか思い知らされた。
「私は……、そんな彼のことが、好きなんです……」
好きだという感情が溢れる。
この気持ちを、今すぐフロイドに伝えたいと思ってしまう。
「キミは、本当に彼のことを愛しているんだね」
シェラの話をルークは頷きながら聴いていた。
「キミは、彼に恋をしたことを後悔しているかい?」
今のシェラの話を踏まえて、ルークは今一度シェラの心の奥底に触れた。
澄んだグリーンの瞳と黒真珠の瞳がぶつかる。
フロイドに恋をして、後悔しているか。
その答えは決まっていた。
「いいえ」
はっきりと、シェラは言い切った。
黒真珠の瞳は力強く、まっすぐにルークを見据えている。
好きになってはいけないと何度も何度も思ったのに、いざ恋に落ちると、出会わなければよかった、好きにならなければよかったとは微塵も思わなかった。
きっと自分は、フロイドといると取り繕わずに素直でいられる。
フロイドの自由さに手を焼きつつも、一緒に過ごす時間は自分にとって幸せな時間であると、ようやく気づいた。
この世界に召喚されなければ見つからなかった幸せだ。
たとえその延長線上に別離があるとしても、この気持ちは否定したくない。
「力強い黒真珠の瞳……!ボーテ!それがキミの答えだ。私はキミに、後悔のない選択をしてほしいよ」