• テキストサイズ

泡沫は海に還す【twst】

第12章 8. 愛の狩人


しかし、フロイドの優しさに触れる度にシェラは想いを募らせ、もう後戻りが出来ないところまで心を奪われてしまった。
悪ふざけの延長のキスだって、なかったことには出来なかった。
忘れようとする度に思い出し、身体が熱くなるような、胸がぎゅっと締めつけられるような感覚に襲われ、フロイドの唇の柔らかさが蘇ってきた。

恋はシェラを強欲にさせた。
あの、フロイドの唇の柔らかさと吐息の熱さをもう一度感じたいとさえ思う。

僅かに頬を染めて目を逸らすシェラへ、ルークは微笑み優しく言った。

「それでいいさ。きっと彼もキミがいつかいなくなる人だと周りの人に反対されても、『好きになっちゃったんだもん、仕方ないじゃん』と言いそうだと思わないかい?」
「……そうですね」
ルークの言う通り、フロイドがそう言っている姿が想像に容易過ぎてシェラは小さく笑う。

ふと、気づいたことがある。
シェラはルークに視線を戻した。

ルークは鋭い。
想い人が誰なのか、シェラは言っていない。
暗に異種族を匂わせるようなことは話したが、何属の相手かはひとことも話していない。
そういえば、さっきも〝深海よりも深い愛〟と言っていた。
求愛をするのは人魚属だと知っていたとしても、アズールの可能性も、ジェイドの可能性だってある。
それなのにフロイドの特徴を捉えた言い方をしていて、シェラは空恐ろしいものをルークに感じた。


「キミは彼のどういうところに惹かれたのか、知りたいな」
ルークは自分の想像を確信に変えたいのか、シェラの想い人について尋ねた。

少しの間の後、シェラはゆっくりと口を開いて語り出す。
きっとルークはもうシェラの想い人がフロイドだと気づいている。
ならばもう隠す必要は無いと思った。
知ったところで、誰かに言いふらしたりはしないだろうから。

「……あの方は……気分屋でマイペースで、いつもいつも本当にめちゃくちゃで、怒るとなにをしでかすか分からない物騒なところはありますが……」

10人に訊いたら10人が口を揃えて言うだろう。全くもって褒めていない。
実際シェラもフロイドの気分屋でめちゃくちゃなところには手を焼くが、そういうところも含めて好きだった。
惚れた弱み、あばたもえくぼだと笑われそうだとシェラは思った。
/ 336ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp