第3章 2. 青空の涙
昨日の会話を思い出しながら、シェラは皮肉っぽく言う。
エビみたいで面白い以外の理由があるとしたら、からかい甲斐があるからだろうか。
どちらにせよ、フロイドは気分屋だから、ゆく先々で見つけた彼の中で面白い人にラベリングされている人に絡んでいるだけだと思う。
そんなことを話しながら、3人と1匹は運動場へ急ぐ。
しかし急いでいる時ほど何かが起こるというのは、どの世界でも共通なもので。
早足で歩くシェラの視界が、突如何かに遮られ真っ暗になった。
「!?」
驚いて立ち止まると、背後に立つシェラに目隠しをしてきた者とぶつかった。
こんなことをする人なんてひとりしかいないとシェラが思うよりも早く、耳元でまたあの蜂蜜のような声がした。
「おはよ、小エビちゃん」
「――……っ!!」
声にならない声を上げ、シェラは飛び上がりそうになる。
振り返ると、いつもの耳飾りを外したフロイドが運動着姿で立っていた。
「お、おはようございます。あの、普通に声をかけていただけませんか?」
思わず鳥肌が立ってしまうくらい驚いたが、努めて平静を装う。
平静を装ってはいるものの、シェラの眉間にうっすらと皺が寄る。
本当に神出鬼没な上に、何故彼はこんなにも音もなく人の後ろに立つことが出来るのか。
シェラはおろか、エースとデュース、それに鼻や動物的勘の利くグリムでさえ気づかなかった。
呆れや怒りを通り越して半ば感心してしまう。
「普通に声かけてもつまんねぇじゃん」
そう正当化してフロイドは主張するが、毎回こんな風に声をかけられたらシェラとしてはたまったものではない。
「リーチ先輩……!?」
「カニちゃんにサバちゃん、それにアザラシちゃんも、おはよぉ」
「あの、どうしてここに?」
昨日と同じシチュエーション。ああ、既視感のある光景だ、とシェラは思った。
今日はフロイドに怯えて逃げ出さないといいが。
「どうしてってぇ、今日の飛行術オレらのクラスとカニちゃん達のクラスの合同授業じゃん」
楽しみだなー、とフロイドは邪気のない笑顔でにこにこしている。どうやら今朝の機嫌は上々らしい。
合同授業なんてシェラにとっては寝耳に水。全く聞いてない。
どういうこと、とシェラはエース達を見た。