第12章 8. 愛の狩人
ぴょんとロッキングチェアから降りると、シェラに駆け寄り膝の上に飛び乗った。
「誰にやられたんだゾ!!子分の仇はオレ様がとってやるんだゾ!!」
グリムはシェラの膝の上でぴょんぴょんと跳ねながら怒りを露わにする。
「痛っ!グリム、ストップ……!」
体長70センチくらいのグリムが膝の上で飛び跳ねると脚にかかる衝撃がすごい。
「そうだな……ダチに怪我させてくれたお礼、たっぷりとしてやらねぇとな」
「おーいデュース、ワルが出てんぞー」
「ちょっと、ふたりとも落ち着いて……」
エースが言う通り、デュースにワルが見え隠れしている。
この調子だと、誰にやられたのか、事の顛末を話すとすぐにでもお礼参りに向かいそうだ。
そうなるとまた面倒なこと――別の問題に発展してしまう。
殺気立つデュースと怒り心頭のグリムを宥めていると、細いヒールで床を蹴るような硬い靴音が聞こえてきた。
「ちょっとアンタ、なに!?その顔!」
「ヴィル先輩……」
階段を降りてやってきたのはヴィルだった。
ヴィルはシェラの殴られ腫れた顔を見るなり、大変美しい顔を驚きで歪めながら大股でシェラに歩み寄る。
エースは空気を読んだのか、ソファから立ち上がった。
「誰にやられたの?」
ヴィルはエースが退いたシェラの隣に優雅に座ると、強めの語気で訊いた。
その圧力に怖気付いたグリムはシェラの膝からぴょんと飛び降りた。
「アズール先輩……」
「は!?」
「え!?」
エースとデュースはシェラの言いかけの言葉に反応した。
気が早い。シェラは辟易としたように半眼でふたりを見る。
「との契約を違反した他寮の先輩です」
視線をヴィルに戻して言った。
視界の端でエースとデュースの安堵しているのが見えた。
シェラがモストロ・ラウンジのアルバイトを辞めさせられると先走ってアズールを睨んで威嚇していたフロイドといい、人の話は最後まで聞いて欲しい。
「つまりアンタはバイト中に他寮のトラブルに巻き込まれたってわけね」
「……そういうことになりますね」
ヴィルは呆れたようにシェラを見ながら言った。
VDC前に顔に傷を作ったことを咎められると考えたシェラは、先回りしてヴィルに謝罪した。
「すみません。マネージャーとはいえ、顔に怪我をしてしまって」