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泡沫は海に還す【twst】

第11章 7-3. 咬魚の誘惑 後編


この状況だとシェラはもちろんだが、多分対処をアルバイトのシェラに任せたルカが物凄く怒られることになる。
だが元はと言えば先に手を出した彼らが悪いのだ。
後でルカを励まさなくては。


ジェイドとフロイドがシェラと違反者達のそばまで来た。
ふたりとも不気味なくらい笑顔を浮かべている。
しかし笑ってはいるものの殺気が隠しきれておらず、シェラは肝が冷える思いだった。

「シェラさん、後のことは僕達にお任せを」
ジェイドがシェラの肩に触れ、大きな身体で品良くお辞儀をした。
後のことは任せようと、シェラは捻り上げていた手を離す。


「小エビちゃん、大丈夫?」
フロイドが心配そうに眉を下げながらシェラの顔を覗き込む。

「はい、私は」
シェラは普段通り口数少なく返す。
フロイドの手に包み込まれた頬が痛んだ。少し腫れているかもしれない。殴られたのだから当然か。

それがフロイドの目には痛々しく映ったのだろう。
何かを堪えるような表情を浮かべると、フロイドは自分の額をシェラの額に、こつん、とくっつける。
そしてシェラを背に庇うようにして、騒動を起こした違反者達に向き直る。

「お前らさぁ、なにしたかわかってんだろーなァ?」
それまでの悲しげな表情から一転、瞳孔が開いた瞳で違反者達を見下ろすフロイド。
今にも絞めそうな勢いで怒りをあらわにしている。

(何回見ても迫力あるなぁ……)

斜め後ろあたりからシェラはフロイドの物騒な表情を見上げる。

ジェイドとフロイドの登場に、他の来店客は野次馬根性を発揮するのをやめた。
しかし事の顛末に興味があるのか、または怖いもの見たさなのか、ちらちらとこちらを意識している。
他の寮生達は、騒ぎが起こっても仲裁に入らなかったことを後で怒られると察したのか、無我の境地に入って仕事をこなしている。

「フロイド、落ち着いて」
今にも違反者を絞め上げそうなフロイドをジェイドは制し、違反者達ににこりと笑顔を向けた。

「先日の〝話し合い〟で契約については後日と仰っていたのは貴方達ですが……、まさかわざわざお越し頂けるとは」
ジェイドは違反者達にさえ慇懃な態度で接する。
しかし三日月型に上がる口角からは、鋭い歯が見え隠れしていて空恐ろしい。

「ところで――……」
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