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泡沫は海に還す【twst】

第9章 7-1. 咬魚の誘惑 前編


しかしグリムがひとりでここに来るとは考えにくかった。
グリムと目線を合わせるようにしゃがんだシェラの頭上から、明るい悪友の声がした。

「グリムだけじゃねーよ?オレ達も来てやったぜー?」
「エース……!」
ぱっと顔を上げると、エースがからっとした笑顔でシェラを見ていた。

シェラがエースを呼ぶと、その後ろからぞろぞろと顔にトランプのスート柄のメイクを施した彼らが現れた。
1番後ろには、スートメイクのトランプ兵に守られるようにして〝ハートの女王〟もいた。

「シェラ、頑張ってるか?」
「けーくんもいるよー!」
「今日はリドルも一緒だぞ」
「わざわざフロイドがいる空間に自分から出向きたくなかったけど……シェラがいるって聞いたから……」
「デュース、トレイ先輩、ケイト先輩、それにリドル寮長まで……」
グリムと一緒にハーツラビュルの彼らが来てくれた。
嬉しくて、シェラの表情が自然と柔らかくなる。

「リーチ先輩と約束したからな、今日はみんなでシェラに会いに来た……ん……」
メイクも含めて全身オクタヴィネル仕様のシェラを見て、デュースの言葉が尻すぼみに小さくなっていった。それに合わせるように、みるみる顔も赤くなってゆく。
シェラは一歩デュースに寄ると、今度は顔を青くしてシェラの一歩分デュースは後退った。
どうしたものかと、怪訝に眉を寄せながらシェラはエースを見ると、エースはエースで目を白黒させていた。

「え……?シェラ、本当にシェラなの……?」
「……そうだけど、どうしたの?」
別人説を出すエース。なんだか既視感のあるこの流れ。
終業式の前と同じ反応。その時と共通していることといえば、メイクをしていること。

「……そんなにびっくりするほどメイク濃いかな……」
ふたりのあまりの驚きように、やはり傍から見ると厚化粧に見えるのかと、シェラは少し気落ちして、気まずく目を逸らす。

「だーかーらー、エーデュースちゃんダメだってー!そこはちゃんと素直に綺麗とか可愛いとか言わないと!ねぇ?リドルくん、トレイくん?」
そんなシェラの落ち込んだ気持ちを吹き飛ばすように、ケイトは明るく割って入ると、リドルとトレイに話を振った。
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