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泡沫は海に還す【twst】

第2章 1. 図書館の攻防


フロイドの手にあるのはシェラが取ろうとしていた古代魔法の文献で、表紙の具合からしてかなり年季が入ってそうな一冊。
本の表題を見たフロイドは、うへぇ、と眉間に皺を寄せている。

「元の世界に帰る方法の手掛かりがなにもないんで手当り次第それっぽい本を読んでます」
「へぇ、大変だね」
分かりやすく興味の無い相槌が返ってきて、話は終わりと判断したシェラは一旦床に置かせてもらっていた分厚い本数冊を持ち上げる。
そしてフロイドに取ってくれた本を乗せてもらうように言おうとしたその時。

「先戻ってるよぉ」
シェラよりも先にフロイドが口を開くと、シェラが持っていた本を全て奪い、さっさと席の方へ戻って行った。

(あれ、意外と優しい)

先に行ってしまったフロイドを追うようにシェラも席へ戻る。
運んでくれた本はそのまま机上に積まれ、フロイドは先程シェラの代わりに取った本をパラパラと捲っていた。

「本、ありがとうございました」
「うん、いいよぉ」
シェラが運んでくれたことについてお礼を言うと、フロイドはこちらを見ることなく返事をし、続けて言った。

「ところでさぁ、小エビちゃんは本に書いてあることわかんの?」
「半分も理解できません」
「あはぁ。それじゃ意味無いじゃん」
あまりに潔いシェラの即答が面白かったのかフロイドは頁を捲る手を止めて笑った、手厳しい一言を添えて。

その後もフロイドは頬杖をついて、つまらなさそうな顔でパラパラと頁を捲っていた。そしておもむろにぱたんと本を閉じて、首を横に振った。

「んー小エビちゃんが知りたいのって空間転移魔法とか召喚魔法だよね?だったらこの本読んでも意味無いよぉ。これ人間を人魚に変える儀式魔法の本だもん」
「今ので理解できたんですか?」
え、とシェラは舌を巻いた。
シェラが別の文献の序章の紐解きに手こずって頭を捻らせている間に、フロイドは流し読み程度で本の粗筋を把握してしまった。
忘れかけていたが、気分屋ではあるもののフロイドもまた優秀な魔法士の卵である。


フロイドは変身魔法の文献を積まれた本の1番上に乗せると、机に伏した。

「せっかく取ってもらったのに申し訳ないです。……って、あの、フロイド先輩」
「なぁにー?」
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