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泡沫は海に還す【twst】

第8章 6-2. 咬魚の束縛 後編


「なになに?金魚ちゃんも小エビちゃんのこと好きなのー?」
「えっ!?そうなのか!?エース!?」
フロイドが軽い調子で訊くと、真に受けたデュースは問い詰めるようにエースに迫った。
デュースの勢いに、エースは辟易としながら答える。

「いや好きかどうかは知らないけど……、けどまぁお気に入りなのは確かなんじゃない?何でもない日のパーティーには毎回必ずシェラを招待してるし。あと、トレイ先輩にシェラの好きなカヌレを毎回用意するように言ってるし」
「あの美味しいお菓子はカヌレっていうのか……」
「へー。ウミガメくんの作るお菓子かぁ、美味しそうだねぇ」
いつの間にか話題の軸がお菓子にすり替わっていて、エースは苦笑いを浮かべる。

「それよりフロイド先輩、今金魚ちゃん〝も〟って言ったっすよね?フロイド先輩はシェラのこと好きなんすか?」
扉の向こうにいるシェラには聞こえないように声のボリュームを下げて、いつかの飛行術の日にした質問を、エースは改めてフロイドにぶつけた。
隣でデュースは真剣な面持ちでフロイドの答えを待っている。

「オレ?うん。好きだよぉ」
「えっ」
照れもせずあまりにもあっさりと認めるから、エースは拍子抜けしてしまい間抜けな声を上げた。
以前この質問をした時は、開口一番不機嫌な返事が返ってきたことがまだ記憶に新しい。

「えっと、それって、えーっと……」
これ以上深堀りしていいのか迷ったエースは目を泳がせる。
ここで訊き方を間違えて不機嫌になられるのも困る。

「それって、シェラのこと、恋愛対象として好きって意味っすか?」
口ごもるエースを他所に、デュースは声を潜めつつ単刀直入に訊いた。

「そーだよ。ちゃんと雌として好きだし、オレの番になって欲しいなって思ってる」
フロイドは淡く微笑みながらそう話す。
その暖かく穏やかな笑みは、まさにひとりの女の子に恋する思春期男子のそれ。
〝フロイド先輩もこんな表情をするんだ〟とエースは口を噤む。
この笑顔を見たら、シェラはどんな気持ちを抱くだろう。

「つがい?彼女ってことっすか?」
〝番〟という表現は、陸で暮らす人間であるエースやデュースには馴染みがない。
デュースはそのニュアンスが上手く噛み砕くことが出来なかったようで、別の言い方を用いて更に訊いた。
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