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泡沫は海に還す【twst】

第2章 1. 図書館の攻防


「小エビちゃんは本当にちっちゃいねぇ。身長いくつ?ご飯ちゃんと食べてる?」
「身長は156センチです。ご飯はちゃんと食べてますよ」
「そーなの?もっと食わねーとおっきくなれねーよ?」
「1日に必要な量はちゃんと食べてますよ」
矢継ぎ早に話しかけてくるフロイドに対し、シェラは淡々と返す。
身長についてひとこと言わせてもらうと、シェラに限らず周りの人はフロイドに比べれば大概小さい。
それにシェラの156cmは16歳の女子の中では平均的な方だ。悲しいことに体型はもっと幼く見えるかもしれないが。
この体型だからこそ大きな違和感無く男子校に馴染めているんだと自分に言い聞かせると共に、これからの成長に期待をしている。

「そうだ!今度モストロ・ラウンジにご飯食べに来なよぉ。小エビちゃんの好きな物作ったげる!」
以前アズールがモストロ・ラウンジでアルバイトしないかと勧誘してきた時に、ジェイドとフロイドの作る賄いは絶品だと言っていた。
その発言からしてきっとフロイドは料理上手なのだろう。

当たり前かもしれないが、この世界の食事は洋食ばかり。
こちらに来てから主食はパンばかりで、そろそろ白米に味噌汁、焼き魚や沢庵が恋しくなってきた頃だった。
リクエストするなら典型的な和食を、と思ったが焼き魚はまだしも味噌汁や沢庵の存在は知らなさそうだ。

「フロイド先輩、味噌汁って知ってます?」
「みそしる?なにそれ。知らなーい。けど、作り方教えてくれたら作ったげるよぉ」
「メニューにないものを勝手に作ったらアズール先輩に怒られませんか?」
眉間に皺を寄せて『フロイド!勝手なことをするな!』と怒っている姿は想像に容易い。
守銭奴なアズールのことだから、きっと手間料と言って追加料金をとってきそうだ。


他愛ない会話を続けているうちにふたりは図書館へ着いた。
しん、と静まり返った館内に響くふたつの靴音。
期末試験も終わり、図書館で勉強をする生徒もめっきり減った。
目当ての本を探すよりも空いている席を探す方が困難だった試験前を思うと、こう人が少ない方が集中できて良い。

席を確保すると、フロイドも当たり前のように隣に座った。
背が高い分脚も長いフロイドにとってこの座席は窮屈なのか、向かいに人がいないことをいいことに、長い脚を伸ばしてリラックスしている。
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