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泡沫は海に還す【twst】

第7章 6-1. 咬魚の束縛 前編


「すっ、すみません寮長。あの、フロイドさんは……?」
「フロイドなら僕に叱られてフグみたいに拗ねてどこかへ行ってしまいましたよ」
「そうですか……」
この場にフロイドがいないと聞いて、あからさまに安堵の表情を見せる1年。
フロイドに知られると何か都合が悪いことがあるのか、とジェイドは笑顔の下で考える。

「正しくはシェラさんを迎えに行きました。フロイドがどうかしましたか?」
「えっ……!?」
フロイドがシェラを迎えに行ったと聞いて青ざめる寮生。
どんどん顔色が悪くなっていっている。
そんな寮生の肩を抱くようにして背後からぬるりと腕が伸び、甘さと危険さをはらんだ声がかけられた。

「なぁに?小魚ちゃん、オレになにか用でもあんのぉ?」
「ヒッ……!?フッ、フロイドさん……いえ、そういうわけでは……」
いないと思っていたフロイドの突然の登場に、寮生の表情は凍りつき、肩を大きく震わせて驚いた。

「あは。なぁーにそんなにビビってんの?」
自分に怯える後輩を見て、フロイドは小馬鹿にするような笑い声を上げる。

「フロイド、シェラさんを迎えに行ったのではなかったのですか?」
「んー、なんか小魚ちゃんがオレの話してんの聞こえたから、オレに用でもあんのかなって思って戻ってきた」
人魚は聴覚が非常に優れている。陸の言葉で云えば、地獄耳。
はっきりと形を成した言葉であれば、ある程度離れていても聞き取ることが出来る。

飄々と笑いながらも、チクチクと刺すような視線で後輩を見るフロイド。
青ざめる後輩は、まるで今にもウツボに捕食されそうになっている小魚のように見える。


「それで、そんなに慌てるほどの用件はなんです?」
アズールは早く用件を話すように促す。

「あの、今日のラウンジのシフト、シェラちゃんのところに僕が入ります」
「ほう……。あなたはシェラさんと同じ1年A組でしたよね。理由を聞かせていただきましょうか」
シェラ本人からシフト変更希望の連絡は来ていない。
それに休みのところを自らシフトに入ると言い出すのは珍しい。
フロイドに対してやたら怯えていることもあり、何か特別な、そしてフロイドに知られたくないきな臭い理由があるのかと、アズールは考える。
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