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泡沫は海に還す【twst】

第7章 6-1. 咬魚の束縛 前編


◇ ◇ ◇

シェラとアズールが雇用契約を結んでから1週間が経った。
シェラ用の寮服のサイズ直しが予定よりも早く上がった為、今日がシェラのモストロ・ラウンジ初出勤日となった。

終業後、教室も廊下も雑談する生徒達で賑わう中、2年の教室が並ぶフロアに駄々をこねる子どもじみた声が響き渡った。

「なぁんでジェイドだけが小エビちゃんのトレーナーなわけぇ!?オレもやりたいー!」
話題は今日から出勤する新人アルバイトであるシェラのトレーナーを誰が務めるか。
であるが、フロイドが文句を言うようにシェラのトレーナーはジェイドが務めることになっていた。

「おやおや。アズール、フロイドもシェラさんのトレーナーをやりたがっていますが」
ジェイドが困ったように笑いながらアズールに話を振る。

「フロイド、いつも給仕を嫌がってキッチンに入りたがっているのはおまえだろう。シェラさんは給仕限定ですから、給仕メインのジェイドがトレーナーをするのが妥当でしょう。それに、トレーナーはふたりもいらない」
「やだやだやだぁー!」
フロイドはアズールの肩を揺らしながら更に文句を言う。
隣にいるジェイドは眉を下げながら笑っているだけで、特にフロイドを止めたりしない。
駄々をこねるフロイドの声が大きすぎて、周りの生徒らが3人をちらちらと見ている。

「わがままを言うな!というか、そもそもフロイドは今日シフト入っていないでしょう!」
フロイドに揺すられたことで飛んでいきそうになった眼鏡を直しながら、アズールはフロイドを叱りつける。

「もーいいし。小エビちゃん迎えに行ってこよー」
アズールに叱られたフロイドは、何を言っても今は通らないことを悟ると、むすっと頬を膨らませて踵を返した。

「拗ねちゃいましたね」
「放っておきなさい」
フロイドのわがままには慣れっこなふたり。
すたすたと大股で去っていく片割れを見送りながら、ジェイドはさほど気にしていない様子で笑っていた。


「寮長!!」
フロイドと入れ違うようにして、今度はバタバタと騒がしい足音と共にオクタヴィネルの1年がふたりの元にやって来た。

「なんです、そんなに慌てて。騒々しい。廊下を走るだなんて品がありませんよ」
廊下を全力疾走してきたのだろう。肩で息する1年を、アズールは冷ややかに咎める。
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