第7章 6-1. 咬魚の束縛 前編
測り間違いかと思ったのか、ジェイドは再三肩幅を測っていたが、何度測っても数値は変わらない気がする。
「……、肩幅34センチ……?」
「え?34?」
ジェイドが訝しげに言うと、フロイドも立ち上がりシェラの肩に当てられた目盛を見た。
シェラの後ろでふたりは顔を見合わせる。
やはり間違っていなかったようで、腑に落ちない表情をしながらもフロイドは再び椅子に腰を下ろし、ジェイドは机に用意されていた紙に数値を書き込んだ。
次に袖丈を測るようで、ジェイドはシェラの右肩の頂点に0を合わせると、そのままメジャーを手首の出っ張っている骨まで垂直に下ろした。
ちらりとジェイドの顔を見ると、今度は分かりやすく困惑した表情をしていた。
肩幅以上に何度も測り直し、その度にどんどん目を丸くしていっている。
(何度測っても同じですよ……)
「え……?袖丈53センチ……?」
「は?」
ふたりの顔に、信じられない、と書いてある。
シェラはなんとも言えない表情でふたりを見る。
「あの、おふたりとも180センチ後半くらいはありますよね?」
「僕は190センチあります」
「オレ191せんちー!」
(改めて聞くと、やっぱでっか……)
「それよりも30センチ以上は小さいんですから、それ相応に腕は短いですよ……」
ちなみにシェラの袖丈53センチというのは、156センチの女性からしたら妥当な数値である。
「その他付属品のサイズ感はどうです?」
ジェイドがスラックスの裾上げの為、折り返した裾をまち針で留めながら訊いた。
「サスペンダーとカマーバンドは調整すれば問題なさそうです」
そう答えながらシェラはカマーバンドのウエストを調整した。
その姿を見ていたフロイドは、何か思い立ったのか立ち上がりシェラの背後に回った。
どことなく圧を感じたシェラは後ろを向きながらフロイドを見上げる。
するとフロイドはシェラの腰に巻かれたカマーバンドの金具に指をかけ、くいっと引っ張った。
「小エビちゃんはぁ、コレ締めすぎちゃダメー」
「そういうものなんですか?緩いと動いているうちに回りそうですが」
「回っちゃったらその時に直せばいいのー」
「というか今、小エビちゃん〝は〟って言いませんでした?背が低くて貧相さが目立つからだめってことですか?」