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泡沫は海に還す【twst】

第7章 6-1. 咬魚の束縛 前編


あの時俯瞰で見た、アルバイトに関しての口論の記憶は初めての反抗だったのだろう。
あの時俯瞰で見た、出ていく自分の背中を見つめていた祖父は、悲しげに当惑した顔をしていた。

分からない。なぜそんな顔をしていたのか。


心中を表情から悟らせないように、シェラはふたりに背を向けると、ジャケットに袖を通し、ストールを下げてハットを被る。
祖父の表情の意味を考えようにも、記憶のピースが足りない。
今は、考えても埒が明かない。だから、考えるのは辞めた。

全身オクタヴィネル仕様になったシェラは気を取り直して、ふたりの方へ向き直る。

「まるでオクタヴィネルに転寮してきたみたいですね」
「わぁ!小エビちゃんがオレ達と同じ格好してるー!!」
ジェイドとフロイドが口々に感嘆の声を上げる。
ジェイドは満足そうな笑顔で何度も頷き、フロイドはじゃれる犬のごとくシェラの周りをくるくる回って寮服姿を様々な角度から見て嬉しそうにしている。

「こういう畏まった服装は、なんだか落ち着かないですね……」
想像以上にふたりが嬉しそうにするから、シェラは照れてハットで顔を隠しながら言う。

「着丈は許容範囲内ですが、肩幅が大きいのと、袖が長いようですね。やはりこれなら追加オーダーではなく詰めの直しで問題なさそうです」
ジェイドが冷静にシェラの着用状態を確認し分析して言った。
確かにジェイドの言う通り、肩に大きくゆとりがあるのと、袖は明らかに長い。
ジェイド曰く、ジャケットの袖丈はシャツの袖口が1センチほど見えるくらいが丁度いいのだとか。

「肩幅と袖丈を測りましょうか」
どこからともなくジェイドはテープ状のテーラーメジャーを取り出すと、シェラのそばに寄る。
シェラは測りやすいようにジャケットを脱いで椅子の背にかけた。
採寸はジェイドに任せたと言わんばかりに、フロイドはシェラのジャケットがかけられた椅子に長い脚を投げ出して反対向きに座った。

「触れてもよろしいですか?」
「どうぞ」
「失礼します」
そう言うとジェイドはシェラの肩に触れ、メジャーの目盛の0を肩の頂点である骨の部分に合わせた。
そのまま首の後ろを通り、右側の肩の頂点までメジャーを引っ張ったジェイドが、疑いの目で目盛を凝視する。
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