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泡沫は海に還す【twst】

第7章 6-1. 咬魚の束縛 前編


困ったシェラは助け舟を求めるように、ちらりと3人へ視線をやった。

「ちょっ、フロイド先輩……っ!殺気出てますって!そんなに心配しなくても、シェラめっちゃ強いっすから!今までの奴らなんて全員無傷で返り討ちにしてますから!」
「そっ……!そうです!シェラと同じくらい喧嘩が強い奴って言ったら、今のところジャックとセベクって奴くらいしかいないですし……!」
「指輪がなくてもコイツの体術の成績は学年トップクラスなんだゾ!」
シェラの困った様子と、殺伐とした空気を感じ取った3人は、いかにシェラが強いかを懸命に伝える。

彼らが言う通り、難癖つけられ絡まれても今のところシェラは無傷で身を守ることが出来ている。
デュースの〝喧嘩〟という例えは少々聞き捨てならないが、幼い頃から武術を徹底的に叩き込まれているシェラは護身術にも通じている。
最終的に自分の身を守れるのは自分だけ。
身の危険を感じたら、致し方なく〝やられる前にやる〟のだ。

「護身術の心得があるので素人にはそうそう負けませんよ。やられる前にやるんで、怪我をしたこともありませんから安心してください」
エース達のフォローのお陰でシェラの言い分にも説得力が生まれた。
何食わぬ顔で言った〝やられる前にやる〟発言に、エースには若干引かれ、デュースには同族と憧憬の眼差しを向けられたが、それは見て見ぬ振りをした。

「ふぅん。殺られる前に殺るっていいじゃん。……でも、今後危ない目にあったらすぐオレに教えてねぇ。小エビちゃんの代わりに絞めてやっからァ」
4人の弁解で一旦は殺気をしまったフロイド。
ただ、フロイドが同じように〝やられる前にやる〟というと〝やる〟が〝殺る〟にしか聞こえず、結局物騒なことに変わりはない。


「そーいや、なんでシェラ中指に嵌めてんの?普通指輪って人差し指とか薬指に嵌めない?大きいの?」
物騒な空気をなんとかしようと、機転を利かせたエースが話の軸を指輪に移した。

「ああそれ?……聞きたい?」
「なんだよもったいぶって。そんなたいそうな理由があるわけ?」
すぐに理由を言わないシェラに、エースは訝しげに訊く。

「大した理由じゃないよ。……強い打撃は手のどこを当てるようにして打つと思う?」
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