第2章 1. 図書館の攻防
この世界に来てひと月半を過ぎた頃に実施された中間テストでは赤点すれすれの点数だった。
流石にこれではまずいと思ったシェラは、今回の期末テストでは徹底的に勉強して見事全教科90点以上の高得点をとることが出来た。
しかし今回の期末テストは平均点が全教科90点と、聞いたことのない点数だったから、結果としてシェラは平均そこそこの成績に収まった。
そしてこの全教科の平均点が90点というのは、今回巻き込まれたトラブルが絡んでいたのだが。
「まあ、一緒にいるのがトラブルメーカーばかりだからね」
毎月のように何かしらのトラブルに巻き込まれている気がする。
やれやれ、とシェラは肩を竦めながらぼやいた。
「それってオレらのこと?」
「他に誰が?」
自覚無いの、とシェラはエースを、そしてデュースを半眼で見る。ついでに腕の中で眠るグリムの鼻先をちょん、とつついた。
グリムは『ふなっ!?』と一瞬身体を震わせたが、そのまままた眠りについていった。
「うっ……ごめんって……」
「世話になったな……」
思い当たる節があるエースとデュースは、気まずそうにそれぞれシェラに謝った。
「まあでも、自業自得にしても流石にあれはやりすぎだし、私も腹立ったから」
気にしないで、とシェラは言う。ただし、『これに懲りたらテストは自力で勉強すること』という念押し付きで。
「シェラはドライだけど、なんだかんだで正義感強いよな」
「そうだね。淡々としてて何考えてるか分かんないとこあるけど、曲がったことが嫌いだよな」
「何考えてるか分からないとは失礼な。私は感情豊かな方だと思うよ」
顔に出ないだけで、とつけ足すと、シェラは遠くを見ながら続けた。
「筋が通ってないことが嫌いなだけだよ。昔から、筋を通せって教えられてきた……気がするから」
「え!?」
「シェラ、記憶戻ったの!?」
シェラがそう言うと、エースとデュースは前のめり気味で訊いてきた。
ふたりは、シェラから自分自身にまつわる記憶が無いと聞かされていたから、シェラの口から昔の話が出てきて驚いている。
「本当に少しだけ。戻ったっていえるレベルじゃないよ」
小さな小さなひとひらを思い出しただけで、記憶が戻ったといえる程ではない。