第2章 1. 図書館の攻防
シェラがこの世界に召喚されてから3ヶ月が過ぎようとしていた。
季節は乾いた心地の良い風が肌を撫でる秋から、雪がちらつき寒さが身にしみる冬へ移り変わっていた。
皮肉にも、住めば都という言葉がある通り、3ヶ月も経てばシェラもこの世界の生活に慣れてきて、ある程度は快適に過ごせるようになっていた。
それでも、部屋の中でも靴を履く土足文化には未だに抵抗があるし、食事で箸を使わないのは少し違和感を感じる。
期末試験の返却も終わり、あとはウィンターホリデーを待つのみとなったナイトレイブンカレッジの生徒はみな浮き足立っていた。
クリスマスや年末年始を祝うのはこの世界でも同じらしく、特にクリスマスは大きなターキーを家族みんなで食べるらしい。
1日の授業を全て終えた放課後。
授業後の過ごし方は各々自由で、部活へ行く者もいれば寮へ直帰する者もいる。
耳に入ってくる会話は今日も、ホリデーをどう過ごすかという話題ばかりだった。
シェラはエースとデュースと共に廊下を歩いていた。
グリムは午後の座学で疲れきってしまったのか、シェラの腕の中ですぴすぴと寝息を立てている。
エースとデュースは入学式直後の退学騒動後、同じクラスということもあり接点が多かった。
そして、入学して1ヶ月にも満たない頃に起こったハーツラビュル寮長のオーバーブロッド事件を一緒に解決してから、自然と行動を共にするようになっていた。
些細なことで言い争いに発展しそうになるふたりの仲裁をシェラが担うことばかりだが、そんなシェラもふたりに助けられることが多い。
持ちつ持たれつで、良好な関係を保っている。
デュースは女子が苦手であると言っていたが、シェラのことは平気らしい。理由を聞いたら度胸があって男前だからだと言っていたがどういう意味だろうか。
しかし今更変に緊張されても対応に困るから、平気であるのは有り難い。
苦労することも多々あるが、それでもふたりはシェラにとって数少ない友人であることは確かだった。
「シェラは今日も元の世界に帰る方法を調べに図書館に行くのか?」
「うん。やっとゆっくり調べ物が出来るから。期末テストの後もなんだかんだ忙しかったし」
「シェラ自身はトラブルメーカーじゃないのに、よくトラブルに巻き込まれるからねー」