• テキストサイズ

泡沫は海に還す【twst】

第6章 5. 人魚の純情


大きな溜息をつきながら項垂れていたところへ、双子の兄弟が通りかかった。
しゃがみこんで頭を抱えるフロイドのそばで、ジェイドは足を止めた。

「おやフロイド。なんです、壁に張りついてしゃがみこんで……フジツボみたいですよ。どうかしたのですか?」
心配しているのかそうでないのか、フロイドのことをフジツボと言いながら、ジェイドは上から声をかけた。

「ねえジェイド……、小エビちゃんって、雌だったの……?」
恥ずかしげに上目でジェイドを見上げながら、フロイドは歯切れの悪い言葉で確認する。

「……はい?何を今更。そうですよ」
何を言っているんだ、とでも言いたげにジェイドはやや呆れた口調で、シェラが雌であることを肯定した。

「フロイドに言ったではありませんか。雌には……シェラさんには優しくしましょうね、と」
「あれってそういう意味だったのぉ!?」
「ええ。それ以外にどんな意味が?」
ジェイドは初めからシェラが女子だと分かっていたらしい。
ならば何故そう言ってくれなかったのか。フロイドは恨めしげにジェイドを睨めつける。

「ならそう教えてよぉー……オレやらかしちゃったじゃん」
「なにをやらかしたのです?」
ジェイドに八つ当たりしても仕方ないと思ったフロイドは、再び項垂れた。
フロイドのやらかした発言が気になったジェイドは、何があったのか説明を求めた。

「オレ、今まで小エビちゃんが雌だって意識してなくてさぁ……着替えを届けようとして、何も考えずにバスルームの扉開けたら下着姿の小エビちゃんと鉢合わせした……」
「……フロイド、気をつけないとあなたそのうち本当にシェラさんに嫌われますよ」
何をやっているんだ、とジェイドが今度は完全に呆れ返った口調で言うと、首を横に振る。

「だからやらかしたって言ってんじゃんー……」
ジェイドの説教に、フロイドは落ち込んで膝を抱える。
縦に大きいフロイドがとてもコンパクトになっていた。

「父さんと母さんも昔から〝雌に優しく出来ない雄はダメだ。雌には優しくしろ〟と言っているでしょう。まずは先の非礼について、きちんとシェラさんに謝りましょうね」
「はぁい……」
ジェイドが冷静に諭すと、フロイドは素直に返事した。

「では、そろそろシェラさんが出てくる頃だと思うので、僕はこれで」
「うん。ありがとぉ」
/ 336ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp