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泡沫は海に還す【twst】

第6章 5. 人魚の純情



勢いよくバスルームから退室したフロイドは、すくそばの壁に背を預けてずるずるとその場にしゃがみこみ、頭を抱える。

(え……?小エビちゃん、雌……?)

ぐるぐると頭が混乱している。
部屋に入ってすぐ目に飛び込んだのは、下着姿のシェラ。
初めて会った時から、線が細く小柄で華奢で、ギュッとしたら折れてしまいそうだとは思っていた。
男子のフロイドにはない身体の特徴が、シェラにはあった。

(いや、雄だって思ってたわけじゃねーけど、……え?雌?)

シェラのことを男子だと思っていたのかと訊かれれば答えは否であるが、かといって女子だとしっかり意識したことも無かった。
ほんのり女子だとは思いつつも、特別これまで性別を意識して接してこなかった。
フロイドにとって、シェラはシェラだった。

それが、あの瞬間に覆された。
未だに心臓がどくどくと煩い。顔の熱が引かない。

もし、シェラが男子であったのならば、下着姿を見られたとしてもあんな反応はしなかっただろう。
それが、あの反応。表情の変化が少ないシェラが、顔を赤くして恥じらいを見せていた。
控えめながらも男子にはない胸の膨らみもさることながら、細い腹から腰にかけてのくびれの曲線が頭から離れない。

今、はっきりと意識した。意識せざるを得なかった。
そうだ、シェラは雄ではなく雌。雌雄で対になる存在。
フロイドにとっては異性で、女の子なのだ。

(だったらなんで小エビちゃん、ちゃんと言ってくれねーんだよ……)

そうフロイドは思ったが、シェラの性格を考えると、女子だからといって特別扱いをされるのは好まなさそうだ。
どうにもならないこと以外は、他の生徒と対等の立場を望むだろう。
それに男子校であるこの学園で、女子であることを宣言すれば、危険な目に遭いかねない。

(もしかしてオレ、小エビちゃんに対して色々とやらかしてきた……?)

思い返せば、異性相手にするには失礼なことをたくさんしてきた。
それに対してシェラは呆れはすれど、本気で怒ったことは無い。
しかし内心どう思っていたか、フロイドは不安に駆られる。
極めつけは、着替え中の鉢合わせ。

シェラに嫌われたくない。

せっかく昨晩、唇へのキスを思いとどまったのに、これでは意味が無い。むしろ最悪だ。
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