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泡沫は海に還す【twst】

第6章 5. 人魚の純情


フロイドがそこへシェラを寝かそうとすると、ジェイドが声をかけた。
「ちょっと待って。流石にこのまま寝かすのは可哀想でしょう」

そう言うと、ジェイドはマジカルペンを取り出した。
ジェイドが呪文を唱えながら透明な魔法石がついたペンを振ると、シェラの身体に柔らかな金色の光が集まった。
そしてその金色の光は、シェラの身体の傷をみるみる塞いでいった。
やがて光が収まると、裂傷が全て完治した肌があらわれる。
余りにも痛々しい、傷だらけのシェラを哀れんだジェイドが、治癒魔法で傷ついたシェラの身体を癒したのだ。

「日焼けまで完治させることは難しいですが、これで痛みは大分楽になるでしょう」
治癒魔法は外傷を治す魔法であるから、日焼けの対処は難しい。
それでも生傷が有るのと無いのでは、苦痛の感じ方に天と地ほどの差がある。

「ジェイドすごい!綺麗に治ったねぇ」
「ええ。……フロイド、貴方の服お借りしますよ」
満足そうにジェイドは頷くと、適当にフロイドの服を選んで手に取り、もう一度マジカルペンを振るった。
すると次の瞬間、ジェイドが持っていた服とシェラが着ていたスカラビアの寮服が入れ替わっていた。
ジェイドがシェラを寝間着に着替えさせた。

「では僕はこの服を洗濯機に入れながら、グリムさんに毛布を渡して来ますね。明日は早起きですから、僕達ももう寝ましょう」
「うん。ありがとジェイド」
ジェイドが部屋から出ていくと、フロイドも寮服から寝間着に着替えようとハットを取った。
ジャケットとストールをまとめて脱ぎ、ボウタイと一緒にハンガーへ、カマーバンドとサスペンダーは外して椅子にかける。
グローブとカフリンクスを無造作に机の上に置くと、一旦ベッドへ腰掛けて眠るシェラの顔を覗く。

(マジで静かなんだけど。生きてんの?)

あまりにもシェラが静かに眠るから、少しだけ不安になる。

息をしているか確認しようと、フロイドはシェラへ顔を近づけるが、静か過ぎて寝息が聞き取れない。
不安が募る中、そっと頬に触れると人肌の温かさを感じた。呼吸に合わせてわずかに胸部も上下している。
フロイドはひとまず安心した。

(相当疲れてたんだね)

ろくに寝ずに穴を掘り続けて今日も他の寮生達と同じように特訓を受けたと、グリムが言っていた。
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