第6章 オシロイバナ *不破雷蔵*
「災難だったな~雷蔵」
「うん…。まぁ、僕が変に彼女に関わっちゃったからな」
「…でも、人を好きになるのは自由だろ?何を迷ってるんだ?」
「…だって、兵助はずっと彼女を好きだったんだ。今更僕がそんなことを…」
僕はそう言って、焔硝蔵を後にしようとした。
蔵から出る時、三郎に肩をポンと叩かれたけど僕はそれでも気持ちは楽にならなかった。
蔵を出て部屋に戻る時、ふいに彼女の声が聞こえてきた。
そこは生物委員会が世話をしている動物小屋のあるところだった。
彼女は固定の委員会に入らない代わりに度々色んな委員会の手伝いをしているのだ。もちろん僕が所属している図書委員会もよく手伝って貰っている。
彼女は生物委員会の1年生達と哺乳類の動物たちの世話をしながらいつもの生物委員会の歌を歌っていた。
「おほ~、雷蔵。どうしたんだ?」
「ん?あぁ、八左ヱ門。」
ジッと彼女を見ていたら、生物委員会委員長代理の八左ヱ門が話しかけてきた。手にはよく分からない虫やらが入っているであろう壺を抱えていた。
「…なにそれ」
「これ?生物委員会で飼ってるヒキガエル。和歌菜は動物で唯一カエルが嫌いだから。彼女が手伝いに来てくれる時はこうして隠してるんだ。」
「そっか。…八左ヱ門って結構彼女と仲いいよな」
「ん?そうかな。まぁ、俺も和歌菜の事好きだからな」
「えっ…俺、も?」
「なんだよ、噂になってるぞ。雷蔵が最近和歌菜と仲が良いって」
八左ヱ門は、壺の中のカエルを触りながら僕の顔を見てニコニコと笑っている。僕を見ていた八左ヱ門はゆっくりと視線を僕から彼女に移した。