第6章 オシロイバナ *不破雷蔵*
『いいんですか!?』
「へっ!?」
『兵助さんから聞きました!不破さんは頭脳明晰で成績優秀だと聞いていたので!そんな先輩に教えていただけるならありがたいです!!』
と、いつも以上にキラキラした顔で僕を見てきた。
そんなことを可愛い女の子に言われてしまったら、大抵の男はコロッと騙されてしまうだろう
・・・否、僕も同じだった。
「…じゃあ、何か分からないことがあったらいつでも聞きにおいで。」
『はい!ありがとうございます、雷蔵さん!!』
・・・あ、変わった。
僕の呼び方が変わった瞬間だった。
きっと彼女の中での基準は、優しい人・・・には名前呼びをするのかなと思ったが、それでも実際すごく嬉しかった。
「うん、じゃあさっそく昨日は何を習ったんだい?」
『えっとこの…』
と、応用書をパラパラとめくり直して開いたページを二人で並んでみる。
そこはちょうど僕も4年の時に苦戦したものだったからよく覚えていた。
『あぁ~なるほど、だからこうなって…』
と、丁寧に帳面に書きながら僕の話を聞いていく。
4年生にこんな素直な子がいるなんて思わなかったから少し新鮮な気持ちにもなった。
「失礼しぁーっす!あれ?和歌菜先輩!」
「…し、失礼します…。あ、和歌菜先輩…こんにちは」
と、いつの間にか後輩達と委員会の交代の時間になっていたようだった。同じ図書委員のキリ丸と1年ろ組の怪士丸が図書室に入ってきた。
『…じゃあ、今日はありがとうございました。また雷蔵さんがいそうな日を狙って図書室に来ますね!』
と、彼女は応用書を本棚に戻して軽く頭を下げて図書室から出て行った。1年のキリ丸に「センパ~イ、なんかいい雰囲気だったじゃないですか~」なんてはぐらかされたけど、悪い気がしなかった。
・・・いかん、喜んでは。
兵助になんて言われるか・・・