第6章 オシロイバナ *不破雷蔵*
『うん~。麻婆豆腐とは違った辛みがいい~!不破さんも一口!』
と、また僕の事は苗字にさん付け
最近は僕と三郎を間違えなくなったけど、呼び方にちょっと釈然としないものの豆腐を残すと後で兵助がうるさいから・・・と彼女が作ったわさび醤油のかかった冷奴を食べる。
「…あれ?」
『どうですか?』
「わぁ、この辛みがなんか癖になる!美味しい!」
『そうですよね?あたしのおすすめの冷奴の食べ方です!!』
と、ニコッと笑う彼女
この笑顔は本当に可愛いと思う。
女の子だからというのもあるけど、きれいな顔をして笑う子だな~という印象はずっとあった。
…おっと、あまり見過ぎるとまた豆腐料理を強引に食わされると思って僕は見るのを辞めた。
僕に視線を送ってきているのは兵助だ。
彼女が男装していた時から彼女の事が好きで、5年生はみんなでそれを応援・・・という名の弄りをしてきたが、だんだんみんなが兵助と同じ感情を抱いているというのは分かった。
最初は、八左ヱ門。
生物委員会の仕事を手伝って貰った縁で親しくなったと言ってたがなんというか、兵助とは違い小動物を愛でるように見ている印象だった。
次は勘右衛門。
兵助と同室ってこともあって奴から彼女の事を散々聞かされたのだろう。そのせいで彼女が気になって好きになった…と勘右衛門と同じ委員会の三郎に聞いた。
・・・みんな、彼女と親しいなりにそれなりに彼女にいろんな印象を持っている。
でも僕は・・・
彼女と何もない・・・
それがどういうわけか、最初はなんとも思ってなかったけどなぜだか寂しく思えてならなかった。