第2章 ブッドレア *浜守一郎*
「…うっ、くそ…」
「おやまぁ、守一郎。どうしたんだい?」
建物の陰をつかいながら西側に近づいてくると、俺はまた建物の陰に隠れて喜八郎を探していると屋根の上から喜八郎の声がしてきた。
喜八郎が俺を見ると、すぐに怪我をしているとすぐに気づいてくれて俺の近くに寄ってきた。
「…すまない、陽動に失敗した。」
「そぉ、それでなんで君がここに?」
「若月に喜八郎のところに行けと言われて…」
「えっ…若月は?」
「今東門の方で戦ってる…。」
というと、喜八郎はいつもよりも真面目な顔つきになってスクっと立ち上がった。
「…喜八郎?」
「守一郎、そっちの塀沿いに行けば外に出られるから近くの木に隠れてて。若月を連れてくるから」
それだけ言って、喜八郎は鋤を持って行ってしまった。
俺は1人残されて、喜八郎の言う通り塀沿いに歩いて外に出た。
外に出て木の上で持っていた布でひとまず傷口を塞いで2人が戻ってくるのを待った。それと同時に先輩達の事も考えていたが、それでも俺は自分の不甲斐なさを実感していた。
すると、すぐ近くでわぁああーーーー!!という声が聞こえてきたと思ったら喜八郎と若月が木の上に登ってきた。
「若月、喜八郎!!」
戻ってきた2人を見ると、喜八郎はぐったりして若月は泣いていた。喜八郎の背中を見ると刀で切られているような傷がありとりあえず手当てをしようとしたタイミングで先輩達からの合図が聞こえてきた。
俺は怪我をした喜八郎を背中に抱えて若月と一緒に最初の集合場所に向かった。