第5章 アサガオ *齋藤タカ丸*
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『タカ丸さん。』
「ん?」
『今日、兵助さんに告白されました。』
「…そうなんだ。」
『…断っちゃいました。』
次の日の事だった。
久々知君にあんなことを言ってしまったせいか、次の日には久々知君は彼女に告白をしたようだった。でも、その次の彼女の言葉で心底安心しきってしまった。
「えっ…なんで?一緒に出掛けたりしてたよね?」
『はい…。でも、兵助さんの事は優しい先輩としか思えなくて…。下手にお付き合いしても迷惑だと思って、断りました。』
「そっか。」
自分の布団の上に寝転がりながらそんなことを言っている彼女はどこか寂しそうだった。きっと言っていることは本心だろうけど、優しい彼女は断られてショックを受けている久々知君に申し訳ない・・・なんて思ってるんだろうな。
・・・俺はその顔を見て、久々知君への殺意じゃなくて彼女に対する不思議な感情を覚えた。
彼女の横たわる布団に俺も腰かけて彼女の頭を撫でる。
彼女もそんな俺の行動を不思議に思ったのか、ゆっくりと顔をこちらに向けた。
『タカ丸さん?』
「…俺は、いつでも君の味方だよ。」
『…ホント、タカ丸さんにはなんでも話せちゃいますよ。タカ丸さんがいるだけで、本当に安心するし、なんでも頼れます』
えへへ…と笑う彼女・・・
あぁ・・・嫌だ。
そんな君を、誰にも渡したくない・・・
誰にも触れられないようにしてしまいたい・・・
自分の中に間違った愛情が芽生えてくる感覚が嫌だった。
「…それじゃあ、お休み」
『はい、おやすみなさい』
俺は感情をグッとこらえて、彼女の頭をポンポン撫でて布団に入った。
彼女が欲しい・・・
彼女を自分だけのものに・・・
でも、そんなことをすれば彼女を傷つけてしまう・・・
あぁ・・・嫌だ
そう思っていたある日・・・
ようやく、嫌だ嫌だと思っていた理由が分かった。