第5章 アサガオ *齋藤タカ丸*
「…今度は辻狩りじゃなくて辻斬りに転身したんですか?」
「…やっぱり、気づいてた?」
「はい、まぁ僕的には和歌菜を傷つけたりした奴がひどい目に遭うなら何でもいいんですけど。」
「…そっか。」
と、俺はハサミをクルクル回しながら喜八郎の話を聞いていた。やる気をそがれちゃったからそのまま長屋の廊下に腰かけてそのまま喜八郎と話をつづけた。
「…タカ丸さん」
「ん?」
「僕の事は、切らないんですか?」
「…アハハ、切らないよ。そんなことしたら、和歌菜が悲しむでしょ?俺は和歌菜が悲しむことはしないよ。悲しませた奴には容赦しないけどね。」
「それは僕も同感です。では、僕と和歌菜が付き合ったらどうしますか?」
「…そうだね、彼女が幸せなら切らない。不幸にしたら切る…かな」
と、俺は彼女の事を思いながら夜空を見上げて答えた
ほぉ~なんて声を出している喜八郎には終始笑顔を絶やさずに受け答えをして・・・
「久々知先輩が…」
「ん?」
「今度和歌菜に告白するかも…と、同じく5年の竹谷先輩から聞きました。」
「…そうなんだ。何?僕に切れって言ってるの?」
「いいえ?ただそういう噂を聞いた…というだけです。じゃあ、僕ももう疲れたので寝ますね。」
と、それだけ言うと喜八郎はさっさと自分の部屋へと戻っていった。
残された俺は、髪を切るために研がれたハサミを見ていた。
久々知君の事は・・・殺す気なんてないよ。
でも、もし久々知君の告白が成功したら・・・どうしよう
そう思った瞬間、はさみの刃がキラリと異常に光った感覚がしたが、俺は気にするのをやめてそのまま自室に戻った。